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ブレッドボード記事のボツ企画

本編記事の冒頭で「そんなわけでブレッドボードを紹介する記事になりました。」
なんて書きましたが、初めは違う目的の記事でした。

ブレッドボードを紹介して、その流れで実際に何か作ってみようという企画でした。
電子工作の入門者が成功体験を得るために、何の工作を紹介すればよいか?

簡単なものがよい。なるべく実用的なものがよい。

とすると、このサイトにはレベルメータ(VUメータ)、ヘッドホンアンプ、時計がある。

レベルメータとヘッドホンアンプはジャック部分でハンダ付けが必要。
時計は見た目に分かりやすく、部品数も少ない。ではこれを紹介しよう。

これが間違いでした。このサイトでお馴染みの時計はマイコンを使っています。
ブレッドボードで気軽に工作したいのに、マイコンの書き込みなんてどうするの?

…で、疑問に思いつつ一応記事を用意したものの、やはりボツになったわけです。
以下、その記事を後悔公開します。
本編記事の続きなのでハンダ付けも回路図も出てきません。
※2013/02 ページデザインを変更


ブレッドボードで作ろう!
【製作のヒント】
ブレッドボードの使い方が分かりました。これで手軽に電子工作を楽しむことができます!
と、急に言われても、どんなものを作ろうか、すぐには思い付かない人もいるでしょう。
ヒントとしては…
光ったり音が出たりすると成果が分かりやすく、「何かを作った」感があってよいです。
それが実用的なものなら作った後も楽しめます。

ここでは例としてデジタル時計を作ってみることにします。
このサイトでお馴染みのオーソドックスな「7セグ時計」です。
ブレッドボードを使った電子工作がどんな風になるのか参考にしてください。

【7セグ時計の特徴】
LEDで数字が光るので何を作ったのか分かりやすく、表示上の変化もあって楽しめます。時計なら作った後も使い道はあるでしょう。工作面では次のような特徴があります。

長所
  • どの部品も比較的安価である。最も高価な部品でも数百円。
  • どの部品も比較的簡単に手に入る。大抵の電子部品ショップ(通販)で扱っている。
  • 部品数が少ないので短時間で作れる。ブレッドボード上の配線が少なくて済む。
短所
  • マイコンを使っている。この記事が対象とする読者にとっては短所。
【電子工作”初挑戦”の人でも作れるのか?】
正直なところ「マイコン」の用意は微妙な問題ですが、工作そのものは簡単です

マイコン(マイクロコントローラという種類のIC)は買ってきてもそのままでは使えません。新品のマイコンはいわば空っぽの箱なので、電気を流しても何の動作もしません。マイコンの中に、時計なら時計のプログラムを書き込んで初めて時計用ICとして動作するようになります。
※他にもメロディーICにしたり、ゲームICにしたり、様々な内容に変えられることがマイコンの素晴らしい特徴です。

つまり、誰かが時計のプログラムを書き込んでくれたマイコンが手に入るなら、7セグ時計は簡単に作れます。または、新品のマイコンに自分でプログラムを書き込むことができれば、同じく簡単に作れます。この場合、このサイトで公開している7セグ時計用のプログラムをマイコンに書き込むだけなので、プログラム開発(ソフトウェア開発)の知識は全く必要ありません
※マイコンの書き込みについてはこちらを参考に→ 今から始めるAVR #1 導入〜ATtiny2313テストボード (#1.1も)

この企画の目的は「ブレッドボードを使って電子工作をやってみよう!」なので、これ以上マイコンの詳細については触れないことにします。今ここに時計用のICがある、ということにして話を進めます。
※上記長所はマイコンあってのものなので、短所は見なかったことにしましょう!

こんな材料・部品で!
ブレッドボードで作る7セグ時計の材料を説明します。
少し詳しく解説しますが、難しかったら部品の名前と形をなんとなく覚えておくだけでよいでしょう。



【ブレッドボード】
「ハンダ付けなしで始める電子工作」その主役です。
写真の右側は7セグ時計の試作品です。

ところで、ブレッドボードは主に部品の検討用に使うと説明しましたが、ここでは完成品そのものとなります。


【7セグ】 (7セグメント表示器)
7セグは7つのセグメント+小数点のLEDでできています。
これを光らせることがお楽しみポイントとなります。
※セグメント…短い線の形をした光る部分。

7セグ自体には数字の形に光る仕組みは無く、セグメント1つ1つが独立して点灯する、ただのLEDです。つまり、赤や緑の丸いLEDと全く同じものが数字の形に並んでいるだけです。

どのピンに電流を流すとどのセグメントが光るかは決まっています。個別に光るセグメントを組み合わせて上手く数字の形になるよう、マイコンでコントロールします。



【トランジスタ】
7セグに流れる電流を仲介する役目です。

7セグの点灯/消灯はマイコンでコントロールします。
7セグには1桁あたり7つ(小数点を入れて8つ)のLEDがあるわけですが、マイコンはこれらを十分に光らせるだけの電流を流すことができません。※一般的なマイコンの性能として。

このようなときにトランジスタを使います。
7セグに流す電流はマイコンではなく電源から引き込むことにして、マイコンは電流を流す/止めるのコントロール役にします。
※コントロールの電流は小さくても大丈夫なのです。

トランジスタはマイコンからのON/OFF信号に反応して、電源からの電流を流したり止めたりします。マイコンの合図に反応する電源スイッチのような働きです。

…そんなわけで、トランジスタの足が3本ある理由もわかると思います。
なお、ここではデジタルトランジスタ(デジトラ)という種類のトランジスタを使います。※詳しい説明は省略。

※説明図は考え方を示すものであり、実際の回路は細部が異なります。


【クリスタル】 (水晶振動子)
1秒を刻む心臓部です。缶詰のような形の部品ですね。
この中では水晶の欠片(かけら)が電極に挟まれています。

水晶には電圧が掛かると歪む(ゆがむ)という性質があります。
電圧を掛ける→止める→掛ける→止める…で、
中の水晶が歪む→戻る→歪む→戻る…です。

この仕組みとマイコンの作用によって、1秒を刻む”鼓動”を作り出します。
※マイコンには発振回路(まさにクリスタルを発振させるための回路)が内蔵されていて、これを利用します。




【タクトスイッチ】
8mm角くらいの小さなスイッチです。押してる間はON、放すとOFF。押したときのカチッカチッとした感触が心地よいです。

見た目は4本足ですが、内部で2本ずつつながっているので実質2本足の部品です。

ブレッドボードに挿すときは向きに注意!
写真の向きに挿すのはセーフ。※足の向きで判断します。
ブレッドボードの中では穴が横につながっていましたよね。
タクトスイッチの方も、もともと2本の足がつながっています。
その向きが同じになるように挿せばスイッチは動作します。

もし写真に対して90度回転させた向きで挿したとしたら、スイッチON/OFFによらず常に4本の足が一つながりになってしまい、スイッチの働きをしません。




【マイコン】 (マイクロコントローラ)
全体の機能を制御する頭脳です。
7セグ、トランジスタ、クリスタル、スイッチ、これらの部品は全てマイコンにつながります。7セグ時計はマイコンを中心に構成されているのです。

ここでは深く考えず、「こいつが全体をまとめて時計にしてくれるんだな。」くらいのつもりで。

因みに写真はAtmel社(アトメル社)のAVR(エーブイアール)というマイコンで、具体的な型番はATtiny2313です。これが今回使う”こいつ”です。

※説明図は考え方を示すものであり、実際の回路は細部が異なります。


左:ACアダプタ
右:電池ボックス+単三乾電池2本
【電源】
材料・部品ではないですが、ついでに説明します。

今回作る7セグ時計は3Vまたは5Vで動かします
3Vは乾電池2本(1.5V+1.5V)、5VはPCからUSB給電です。
※USB給電にしてもPCで7セグ時計を操作できるわけではありません。単なる電源線として利用するだけです。

乾電池やUSB給電だけでなくACアダプタも使えます
電子部品を販売しているショップ(通販)で購入できます。

ACアダプタの電圧
3V/3.3V/5Vのどれでもよいです。LEDの明るさには影響しません。
※明るさは抵抗で調節するため。

ACアダプタの電流
7セグ時計の動作には500mAタイプで十分です。1Aや2Aなど大きな電流が取れるACアダプタはもちろんOKです。
※500mA(ミリ・アンペア) = 0.5A(アンペア)


以上、主要な部品を紹介しました。他にも抵抗やコンデンサという部品を使います。※説明は省略。
「こんな部品があるんだな」程度にでも知っておくと、工作中に「この部品とこの部品をつなぐはずだ」という勘が働き、工作のミスが減らせるようになります。

組み立て開始!
マイコンを配線する
ブレッドボードのGND線をつなぎます。穴番号は15、ボードの真ん中です。
写真では短い線を継ぎ足していますが、1本線でつなぐ方が理想的です。
マイコンのVCC(:穴番号5)とGND(:穴番号14)を電源ラインにつなぎます。
マイコンは窪みや小さい丸印があるピンを目印にして、挿す向きに注意してください
※電子工作ではよく、電源のプラス側(3Vや5V)を VCC、マイナス側(0V)を GND [読み:グランド]、と表記します。

マイコンを含めIC全般には、小さい丸印のピンを1番とし、U字型にぐるりと番号を付けるというルールがあります。
右上、ブレッドボードの図で言うと、穴番号5-eのピンが1番、
右へ向かって2,3,4,…番、GND(青線)の列の穴14-eのピンが10番、
その向かいの穴14-fのピンが11番、左へ向かって12,13,14,…番、
VCC(赤線)の列の穴5-fのピンが20番です。

タクトスイッチを配線する
タクトスイッチを2個配線します。足をよく見て挿す向き(縦横)に注意してください
タクトスイッチの片足はGNDに、他方はマイコンのピン2,ピン3にそれぞれつなぎます。
ブレッドボードのかみ合わせが緩いとタクトスイッチがピョンッと外れると思います。
そのときはグリグリ押し込んでください。※足4本をピンセットで90度ねじるという荒技もありますが。

クリスタル、コンデンサを配線する
クリスタルをマイコンのピン4,ピン5に接続します。
穴番号8-dから9-bに掛けて斜めに挿します。
コンデンサはクリスタルと同列の穴から電源ラインのGNDに掛けて挿します。

クリスタルとコンデンサ2本の足が互いに接触しないよう注意してください
コンデンサの本体(上部の青い部分)同士は触れても構いません。

抵抗を配線する


※1本だけ色違いの線なのは、下4本の線と重なっても見づらくないようにするためです。
特別な抵抗というわけではありません。

マイコンのピン12〜19(穴番号13〜6)をブレッド
ボード上の別の点へ引き出すように抵抗を挿します。
抵抗の足がどれも接触しないように挿してください。
※足を折り曲げる位置や角度を調整する。

特に、左写真での抵抗と下4本の抵抗の足が互いに接触しないよう注意してください(緑線)。抵抗の本体部分と金属部分は触れても構いません(赤点)。
電源の電圧によって抵抗値を変える(明るさ調節)
LED(7セグ)は通常、10mA〜15mA流せば十分明るく光ります。大抵20mAまでとします。
仮に順方向電圧2.0Vの7セグに10mA程度流す抵抗値は、電源が3V/3.3Vの場合は100Ω前後、電源が5Vの場合は300Ω前後です。値が大きいほど暗くなるので、眩しいときは調節します。
いずれにしろ、「この値でないといけない」という決まりはありません。好みで決めます。
※LEDの順方向電圧、電源電圧、電流から抵抗値を求めます。詳しくは「LED 電流制限抵抗 計算」で検索してください。

トランジスタを配線する その1

トランジスタ4個を配線します。ここで使っているのはデジトラ(デジタルトランジスタ)です。今回用意した7セグはアノードコモンだったので、トランジスタはPNP型を使います。よって、トランジスタのエミッタをVCCに接続します。
7セグがカソードコモンの場合はNPN型のトランジスタを使い、エミッタをGNDに接続します。
(解説)今から始めるAVR #2 ATtiny2313 7セグ4桁ボード〜そこ(7セグ)んとこ、詳しく

4個のトランジスタは互い違いの向きに挿します。エミッタ端子はブレッドボード上で同列の穴に挿します。
トランジスタは型番が印刷されている平面側が正面です。トランジスタを正面から見て、端子は左から
エミッタ(E)、コレクタ(C)、ベース(B)です。※「左からE,C,B=エ・ク・ボと覚える」…なんてーことは何十年も昔から言われとります。

トランジスタを配線する その2
トランジスタのベース端子とマイコンを接続します。
写真ではのジャンパー線です。ジャンパー線は単芯の被服線で代用できます。

7セグを配線する

7セグを抵抗8本とトランジスタのコレクタ端子4ヵ所につなぎます。
写真では基板にハンダ付けした7セグを暫定的に使用していますが、実際には4桁1組のダイナミックドライブ用のものを使います。配線材はオス-メスのピンケーブルを使います。
最初に長いブレッドボードを用意し、7セグをブレッドボードの空いているところに挿して、ジャンパー線を12本使って配線する、という方法でも構いません。完成した時計をどのように置いて使うかや、予算によってアレンジしてみてください。

パスコンを取り付ける
マイコンの安定動作のためにバイパスコンデンサ(パスコン)を取り付けます。
マイコンの電源ピン(VCCとGND)に直接取り付けるような穴に挿します。
パスコンの足(金属部分)がマイコンのピンと接触しないよう注意してください

電源を接続する
電源接続前に、抵抗やコンデンサの足(金属部分)が互いに接触していない事を十分に確かめてください。どこか接触していると、電源オンで誤動作したり破損します。

乾電池、USB端子(の電源ピン)、ACアダプタの、プラス極/マイナス極をブレッドボードの電源ライン(片側の赤線/青線)に接続します。電源スイッチはないので電源ケーブルの抜き差しで回路のオン/オフとなります。

成功すると7セグに数字が出ます。時計の初期表示は[ 0.00]です。
数字の一部が欠けたり表示がチラつくときは、7セグとブレッドボードをつなぐケーブルの接触不良です。しっかり差し込んでください。


以上で完成です。※配線図にはPasSを利用しました。

関連情報など
ボツ記事は以上です。時計の操作方法やその他の説明は省略。最後に関連情報など。

クロック供給の実験結果と部品選定
コスト重視でセラロックかクリスタル(水晶振動子)を使うことにしました。
8MHzセラロックで動作実験
 1時間につき20秒遅れる。→10時間で4分遅れた。→1日で8〜10分遅れることになる。
16MHzクリスタルで動作実験
 1時間後/5時間後でズレなしに見える。→8時間後に1秒遅れた。→1日で3秒弱遅れた。

クリスタルを採用。負荷容量のコンデンサは22pF。マイコン内蔵クロック8MHzより高いクロック16MHzにしました。実際の使用では分周しますが、マイコンを別の目的で使い回すことになったとき、幅広く対応できるようにと。そこまで考えるかー
なお、コストを無視するなら水晶発振器(クリスタルオシレータ)を使った方がよいです。

今回作成したPasSの部品
ブレッドボード EIC-801。
ダイナミックドライブ用4桁1組の7セグ。ピン番号はOptoSupply Limited社の製品合わせ。
まとめてダウンロード→pass_parts_bb_7seg.zip


基板で工作する場合
秋月電子の片面C基板(15x25穴)に収まります。配線もシンプル。
青線は基板裏面。スズメッキ線で。
緑線は基板裏面。被服線で。図は簡略化してありますが、実際は7セグの各ピンに配線します。
オレンジ線は基板表面。被服線で。スズメッキ線でも可(クリスタルと接触しないよう注意)。

7セグがアノードコモンの場合の配線。
トランジスタはRN2205

7セグがカソードコモンの場合の配線。
トランジスタはRN1205


◆ ◆ ◆
誰に向けて書いた記事なのかサッパリ分かりませんね。


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