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AVRライターを選ぶ 〜始める人の1台目、慣れた人の2台目〜

2010年3月 ※2011/08 記事を改訂
AVRの開発をするにはAVRライター(書き込み器)が必要です。
AVRライターはAtmel純正品を始めとして、いくつもの製品が販売されています。
この記事ではいくつかのライターを調べ、ライター選びについて考えてみました。

「これからAVRを始める人の1台目のライター」「AVRに慣れた人の2台目のライター」
1台目としては基本的に製品ライターの購入を勧めます。
2台目ともなれば自作ライターも視野に入ってきます。

写真説明写真拡大
上:簡易型AVRライターキット(製品)、中:HIDaspx(自作)、下:STK200 ISP dongle(自作)


2011/10 追記
秋月電子FT232Rモジュールを利用したAVRライターを公開しました。
FT232Rモジュール活用 #3 FT232-AVRライター とにかく導入が簡単

2012/02 追記
高電圧パラレルライターと、米粒AVR ATtiny10に対応したTPIライターを公開しました。
AVR 高電圧パラレル/シリアルライター
FT232Rモジュール利用 AVR TPIライター
HID TPIライター2012/07 追記 これ↑とは別のタイプ


AVRライター 【製品】
製品名(メーカー) ソフト PCとの接続方法/備考 価格(2012/08現在)
AVRISP mkII
(Atmel)
AVR Studio USB接続。
AVRメーカー純正品。
秋月電子
3000円+送料500円
Pololu USB AVR Programmer
(Pololu)
AVR Studio USB接続。
小さい。多用途。
スイッチサイエンス
1980円+送料180円
USB接続型AVRライター
AVRWRT
(デジット)
※2011/10 新型発売↓
専用ソフト USB接続。
製品のサポート状況に注意。
共立エレショップ
1900円+送料380円
高性能USB接続型AVRライタ
AVRWRT3

(デジット)
専用ソフト USB接続。
AVRWRTの後継機。
共立エレショップ
2400円+送料380円
USB接続AVRライタ
[AVR-USBasp-B]

(aitendo)
専用ソフト USB接続。
10ピンタイプ。
aitendo
900円+送料490円
簡易型AVRライターキット
(ストロベリー・リナックス)
専用ソフト
(avrsp.exe)
COMポート接続。
ChaN氏のライターをキットに
したもの。ソフトも同氏作。
ストロベリー・リナックス
980円+送料400円
AVR-PRG-1S
(マイクロファン)
コインは大きさ比較のため
専用ソフト
(avrsp.exe)
COMポート接続。
上記製品と同内容。
ただしISP用ケーブルは別売。
マイクロファン
840円+送料525円+
ISP用ケーブル420円
※リンク先は製品紹介ページ。リンク切れの際は済みませんが自力でたどり着いてください。

製品ライターについて
これからAVRを始めようという人はUSB接続の製品ライターを買いましょう。
1台目は「確実なライター」を手にすべきだと思います。
※半完成品、キット等も可。ユニバーサル基板で一から自作することはお勧めしないという意味です。

まずは「AVRISP mkII」を勧めます。Atmel純正ですし、AVR Studioから書き込めるので書き込みソフトを別途用意する必要がありません。純正品は高価だからチョット… と思いますか? 保護ダイオードの挿入やLEDでの状態表示など、設計がしっかりしていると評判です。そりゃ壊れるときは壊れるでしょうけど

それでも価格優先で、という人は「Pololu USB AVR Programmer」はどうでしょう。この記事を書いていて見付けました。AVR Studioから書き込めるようで、小型で、付属品も必要十分です。
基板にはTTLレベルのTD/RDと2つのI/Oピンが出ています。これを使ってシリアル通信で周辺機器を制御することもできるし、2chの簡易オシロスコープにもなるようです(Windowsアプリ)。
またこのライターはファームのアップデートに対応していて、ハード面のサポートもあります。
ただ、ネット上で利用者の使用(試用)レポートがほとんど見つからないのは心細いです。

デジットの「USB接続型AVRライター AVRWRT」もよく知られています。純正品(AVRISP mkII)より安価という点でこちらを勧める声も聞きます。ですが、製品サポートが遅れ気味のようです。最新のサポート状況(Windowsのバージョンや書き込めるAVR)をデジットに問い合わせた方がよいでしょう。 2011/10 追記 新型が発売されました。AVRWRT3

PCにCOMポートが付いていたら、COMポート接続のライターを買うのもよいです。
このタイプはいくつか販売されていますが、基本的にどれもChaN氏の「COMポート制御ISPアダプタ」をキットにしたもので、謂わばメーカー製品と自作物の間にあるようなライターです。
私は「簡易型AVRライターキット」(ストロベリー・リナックス)を使っています。
【参考】
今から始めるAVR #1 導入〜ATtiny2313テストボード このキットをチラッと紹介しています。
今から始めるAVR #1.1 導入編の補足〜環境構築の説明 このキットとISPのピンの対応を説明しています。


最近のCOMポート事情
PC系ニュースサイトでは、「最近のPCにはCOMポートが付いていない」とよく言われます。メーカー製デスクトップPCやノートPC、ネットブックは確かにそのようです。
しかし、自作PCの世界では全然そんなことありません。2010年2月現在、最新のマザーボードでも大抵はCOMポートが付いています。バックパネルに出ていなくてもマザーボード上にコネクタが付いています。
自作PCを使っている人はマザーボードのマニュアルを確認してみてください。
スペック表でCOMポートは「シリアルポート」とも表記されています。


マザーボード上のCOMポートから引き出し、D-SUB9ピンケーブルとつなぎ、PC背面から出しています。
(ASUS P5B-VM / 2006年製)


Atom搭載のMini-ITX規格のマザーボードでは、多くがCOMポートとLPTポートを標準装備しています。メモリやHDDが余っていたらAVR工作専用PCを作ってしまうのもありです。
と、「AVR USB接続の周辺機器をPCから操作する〜仮想COMポート〜」で同じことを書きました。

AVRライター 【自作】
作品名(作者) ソフト PCとの接続方法/備考 サイト(紹介ページ)
HIDaspx
(千秋ゼミ)
hidspx.exe USB接続。
部品としてAVR自体を使っているので、
これを作るには別のAVRライターが必要。
千秋ゼミ
AVR/HIDaspx
COMポート制御ISPアダプタ
(ChaN)
avrsp.exe COMポート接続。
COMポート接続型のスタンダード。
ELM
AVRライタ製作集
LPTポート制御ISPアダプタ
(ChaN)
avrsp.exe LPTポート接続。
抵抗だけで作れるライター。
ELM
AVRライタ製作集
FTAVRW
(J.Sugita/jsdiy)
ftavrw.exe USB接続。
秋月電子FT232RLモジュールがライターに。
『昼夜逆転』工作室
FT232-AVR Writer
※敬称略。 ※リンク先は作品紹介ページ。リンク切れの際は済みませんが自力でたどり着いてください。

自作ライターについて
電子工作/AVRに慣れている人はライターを自作する手もあります。
  • 自作して問題が発生しても、自力で解決できる人。最重要条件
  • すでにライターを持っているが、別のライターが欲しい人。予備や別の使い勝手を求めて
  • ライターを自作すること自体が目的の人。手段が目的にすり替わり
【USB接続のライターを作る場合】
USB接続の自作ライターは「HIDaspx」(千秋ゼミ)を作る人が多いようです。
ハード的にはV-USBの応用で、このサイトでお馴染みAVR-CDC(ATtiny2313版)と同様です。
【参考】 AVR-CDCの紹介と利用例
AVR USB接続の周辺機器をPCから操作する〜仮想COMポート〜」 「Shuttle K45 改造 自作デジタル時計


「HIDaspx」はそれ自身にAVRを使っています(ATtiny2313)。つまり「HIDaspx」を作る場合、ATtiny2313に「HIDaspx」のファームを書き込むためのライターが別途必要になります。

ヒント
秋月電子の「FT232RL USBシリアル変換モジュール」をライターにしたサイトがありました。「HIDaspx」を作るための最初に使うライターにもなりますが、書き込みソフトの導入がとても面倒くさそうでした。※Linux環境では有力候補だと思います。
2011/10 追記
このサイトでもAVRライターを公開しています(上記、自作AVRライター一覧の「FTAVRW」)。導入が簡単です。

【PCにCOMポートが付いている場合】
「COMポート制御ISPアダプタ」(ChaN)を作ります。
それを使ってさらにUSB接続のライター「HIDaspx」を作ってもよいでしょう。

【PCにLPTポートが付いている場合】
「LPTポート制御ISPアダプタ」(ChaN)を作ります。
抵抗だけで作れる簡易版の他、バッファICを使った安定性向上版もあります。
いずれにしても、それを使ってさらにUSB接続のライター「HIDaspx」を作ってもよいでしょう。

どのAVRライターを選ぶか
1台目のライターとして
【案1】 USB接続の製品を買う
「AVRISP mkII」(Atmel/純正品)を買う。
「高性能USB接続型AVRライタ AVRWRT3」(デジット/安価)を買う。

【案2】 PCにCOMポートが付いている場合
「簡易型AVRライターキット」(ストロベリー・リナックス)や、他社同等品を買う。
電子工作に慣れているなら「COMポート制御ISPアダプタ」(ChaN)の自作でも可。
2台目のライターとして
【案1】 安価な製品ライターを買う
「Pololu USB AVR Programmer」(Pololu)を買う。※期待・冒険。

【案2】 自作する
1台目のライターを使って「HIDaspx」(千秋ゼミ)を自作する。
その他、好きに自作する。

結局、私の2台目は
「LPTポート制御ISPアダプタ」(ChaN)
「STK200 ISP dongle」
「HIDaspx」(千秋ゼミ)



「LPTポート制御ISPアダプタ」(ChaN)/「STK200 ISP dongle」
私のPCにはLPTポートが付いているので試しに作りました。ただし作ったのは、同じ材料で配線が違う「STK200 ISP dongle」です。書き込みソフトavrsp.exeはこちらにも対応しています。
因みにAVR Studioは、USB接続の「STK600」とCOMポート接続の「STK500 or AVRISP」なら書き込みをサポートしていますが、LPTポート接続の「STK200」はサポートしていません。

動作確認としてavrsp.exeからATtiny2313に書き込んでみて、OKでした。
このライターについては「ライターを自作すること自体が目的」だったので、これでおしまいです。

「HIDaspx」(千秋ゼミ)
USB接続のライターが欲しかったので作りました。約45x32(mm)。ライター機能に絞って回路は一部省略。また、部品の値を変更しています。因みに完成写真ではパスコンが見えませんが、ICソケット内にあります
動作確認としてATtiny2313(もちろんライター上のものとは別の)に書き込んでみて、OKでした。
書き込みソフトhidspx.exeはChaN氏のavrsp.exeを拡張したもので、私にとってはこれまでと同じソフトのつもりで使えるのが好都合です。これが私の2台目になりそうです。


HIDaspxの動作で不明な点があったので製作前にブレッドボードで実験しました。
HIDaspxのマニュアルを読むと、特徴の1つに「ISPコネクタを抜き差しすることなく開発可能」とあります。しかし書き込み完了からターゲットの動作開始への、状態遷移の切っ掛けが分かりません。
私は「簡易型AVRライターキット」しか使ったことがなく、それ以外のライターの動作を知りません。「簡易型AVRライターキット」はスイッチでライターとターゲットの動作を切り替えます。HIDaspxにスイッチはないので、この点が疑問でした。

実験した結果、書き込み完了と同時にターゲットが勝手に動作を開始しました。なるほど、ファームのソースを見たら書き込み後はそのまま(特別な処理なしに)リセット解除しています。
この動作は便利かもしれないし、製作物によっては困るかもしれないし、使い込んでみないと分かりません。

その他の候補
「Pololu USB AVR Programmer」(Pololu)
ちょっと気になっています。公式サイトの説明とマニュアルを読んだら欲しくなってきました。

おまけ
ISP 6ピンケーブルをブレッドボードに挿すための変換ケーブルを作りました。
VCC,GNDの2本はセット。RESETは単独で1本。SCK,MISO,MOSIはAVR上でこの順に隣り合わせなので、変換ケーブルでも3本セットにします。こうすると6本バラバラで扱うより楽です。
写真はHIDaspxに装着した例。他のライターでも使えます。



◆ ◆ ◆
今回手にしたのはあくまで2台目のライター。
1台目として使っている「簡易型AVRライターキット」(ストロベリー・リナックス)は
スイッチで論理的にターゲットから切り離せる機能が便利で手放せません。
※利用者が任意のタイミングで切り替えられる点が良いです。


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