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ヘッドホンアンプ・プラスアルファ #2 イコライザ(TA2078P)

2010年4月
タイトル写真はある日の製作風景。動作中の様子。
ヘッドホンアンプにちょっとした周辺機器を組み合わせたシステムを考えています。
今回は第2段階完成ということで、シリーズ第2回の記事です。

関連記事
ヘッドホンアンプ・プラスアルファ #1 VUメータ(LM3915)
 ↑シリーズ第1回の記事です。
LM3914/LM3915/LM3916と両電源、仮想GNDとレールスプリッタ
ディスプレイドライバ LM3914/LM3915/LM3916について
PCオーディオレベルメーターの製作
 ↑↑↑この3つは現在作っているものの準備編や基礎解説です。

キーワード
LM3914, LM3915, LM3916, LM358, NJM4580DD, TA2078P,
ChuMoyヘッドホンアンプ、VUメータ、レベルメータ、両電源、OPアンプ、
ボルテージフォロア、レールスプリッタ、Rail Splitter, イコライザ

本システムについて

写真はヘッドホンアンプとVUメータに、イコライザを追加した回路です。第2段階のシステム完成です。右上の小さいブレッドボードがイコライザ部です。TA2078PというICを使いました。
基板には仕上げず作業完了とします。ここからさらにマイコン制御やLCDモジュールを試すので。





TA2078Pについて

イコライザIC TA2078P
データシートは「1997-04-07」版、「2002-03-05」版が見つかります。新しい方を参考にします。
使い方(基本回路)はデータシートに載っているので、その通りに作ればよいです。
データシートでは内部構成図と兼用なので回路図を起こしてみました。



片側3個の小容量のコンデンサC3〜C8はIC内部のOPアンプに加えられ、ブーストパターンを作り出します。このコンデンサにはマイラーコンデンサが向いています(写真の黄色い部品)。
カップリングに使う電解コンデンサC1,C2,C9,C10は無極性電解コンデンサでもよいです。音声信号の通り道なので、できればオーディオ用で。
電源安定化の電解コンデンサC11はデータシートでは47uFですが、オーディオ工作的には100uF〜470uF程度あった方がよいかもしれません。

プリセットされたブーストパターン「Rock」「Classic」「Pop」の特性はデータシートにグラフが出ているので確認してください。Rockは低域強ブースト+高域ブースト、Classicは低域弱ブースト+高域ブースト、Popは中域ブースト(Vocal強調)、です。

ブーストパターンは2個のスイッチで切り替えます。on/offの組み合わせで4通りです。
切り替え操作をマイコンで制御することも、このICは想定しています。
データシートによると、スイッチOpen(未接続)でもL(ロー)と同じとしていますが、ノイズが飛び込んできて勝手にH(ハイ)になっては困るので、Hからの切り替えはOpenではなくLにしましょう。

TA2078Pの中身はOPアンプなので、入力信号は増幅されて出力されます(ブーストしなくても)。
データシートによると、Min.12dB/Typ.14dB/Max.16dB です。電圧が4/5/6.3倍。ということで、実はこの後にヘッドホンアンプをつながなくても、そこそこの大きさで聞こえるようになります。

入力側のカップリングのコンデンサは、IC内部の抵抗と合わさってハイパスフィルタを形成します。
出力側はカップリングのコンデンサと抵抗を付けてハイパスフィルタにします。もしこの後に別途アンプを接続するなら、そちらの入力側のハイパスフィルタと兼用しても構いません。

動作電圧と出力電圧の関係
データシートによるとTA2078Pの動作電圧は7.5V〜14Vです。これについて実験したところ、もっと低い電圧でも動作することが分かりました。下限は一応2Vでしたがギリギリの動作なので、実際に使用する際は3Vないし3.3Vまでにした方がよいです。ただし低電圧動作では出力電圧の様子が違います。

TA2078Pの中身は単電源で動作するOPアンプです。出力電圧にはバイアスが掛かります。
下図は動作電圧と出力電圧の関係を示すグラフです。音声入力を無音にして測定しました。
見事なまでに直線変化です。
VCC < 6.0V の範囲では出力電圧(のバイアス)はVCCに比例して変化します。
6.0V <= VCC の範囲では4.9Vで一定です。



※このグラフは私が実験した結果を示したものであり、TA2078Pの特性として保証されたものではありません。

回路と部品の説明

本システムの回路図はこちら。(1260x900)


私は音質にこだわらないので、電子工作ファンの視点で回路や部品について説明します。
前回の記事「(略)#1」からの変更点のみ説明します。

GNDの表記について
前回の回路図でVCC, Virtual GND, VEEと表記していたところを、
今回の回路図ではVCC, Virtual GND, (Global)GNDに変更しました。

VEEは負電源を表します。しかし本システム内にGND(0V)を下回る電源ラインはありません。
両電源で動作するOPアンプを使うにも、仮想GNDを設けて相対的に負電源と見なしているに過ぎません。ですから、電圧的にはマイナスではなく0Vです。
それで今回の回路図では、OPアンプの電源端子でのみVEEと表記し(意味的な強調のため)、その他の部分ではGNDと表記することにしました。
話がクドイですが… 仮想GNDとそれに対するVEEというのは結局のところ、OPアンプを単電源で動かし、入出力にVCC/2のバイアスを掛けて使っているということです。

本システムの回路図では便宜上、「▽」マークのグランドを仮想GND、「///」マークのグランドをグローバルなGND、と使い分けることにします。「グローバルな」というのも勝手な表現です。回路図全体に渡る基準電位という意味合いです。無理矢理言葉を作るなら RealGND, TrueGND, AbsoluteGND とか?

各部の電位関係について
本システムは電源(乾電池/ACアダプタ)を単電源と見なす部分と、両電源と見なす部分が連係して動作しています。基準電位を見失うと誤配線してしまい、システムが上手く動作しなくなります。片側しか音が出ない、全く音が出ない、ブツブツとノイズが出て消せない、…など。
そこで、本システムの音声信号に関わる各部の電位関係を図にまとめました。



まず、音声信号はイコライザTA2078Pに入力されます。そのときカップリングのコンデンサ(外付け)と抵抗(IC内部)によるハイパスフィルタ(HPF)を通ります。
音声信号はIC内部の基準電位に対してDC成分が取り除かれ、ブースト処理された後、バイアスを掛けて出力されます。IC内部の基準電位がバイアスそのものかもしれません。
ここで、図には描いてありませんが音声信号はVUメータ用に分岐して行きます。よって、ボリュームは音声信号が分岐した後、OPアンプまでの間に入れます。
ボリューム、OPアンプ、ヘッドホンは仮想GNDを基準に配線します。OPアンプ直前のハイパスフィルタも、抵抗は仮想GNDに接続します。
OPアンプから出力された音声信号は仮想GNDを基準としているので、ヘッドホンのグランド端子も仮想GNDへ接続します。



電源部(回路図:上側)
電源分圧の抵抗R1,R2とOPアンプの入力の接続点に、電解コンデンサC17を追加しました。これはTLE2426のNOISE REDUCTION機能と同等です。効果覿面。ACアダプタからのブーというノイズが消えます。容量は1uF〜10uF程度で適当に。



イコライザ部(回路図:左)
TA2078Pの基本回路の通りです。出力側のハイパスフィルタは省略します。続くOPアンプ部とVUメータのアンプ部の入力側にあるハイパスフィルタに任せます。イコライザの出力側から先は音声信号の基準電位が変わるので、ハイパスフィルタの抵抗の接地先もそれに合わせます。



ヘッドホンアンプ部(回路図:中)
前回から変更点はありません。



VUメータのアンプ部(回路図:下側)
イコライザ部は音声信号を増幅して出力するので、モノラル化の抵抗R9,R10を前回より大きくします。試行錯誤の結果、2.2kΩにしました。

今回の開発環境で、VUメータを十分振れさせるためには40〜50倍の増幅率が必要でした。
前回の回路は200〜250倍なので、今回1/5になりました。イコライザの増幅率が5倍(14dB)なので計算は合います。当たり前といえば当たり前ですが、妙に感心します。
そのようなわけで、増幅率を決める半固定抵抗VR2も500kΩから100kΩに変更しました。



VUメータ部(回路図:右)
LM3915のV-端子の接続先の表記をVEEからGNDに変更しました。回路自体は何も変わっておらず、電圧的にも前回と同じ0Vのままです。
さて、V-端子の電位を気にしながら回路図を眺めると、R-LO端子の存在意義がよく分かります。
R-LOは入力される信号の下限値を決める端子で、今、仮想GNDに接続されています。
LM3915のV-端子はGND(0V)に接続されているので、入力信号も0Vから見ることができます。しかし実際に入力される音声信号はVCC/2のバイアスを持った信号です。従って下限値をVCC/2とすることになります。すなわち仮想GNDの電位です。

LEDの発振防止用の電解コンデンサC6は、前回は仮想GNDにつないでいました。
今回、(グローバルな)GNDへ変更しました。こちらが正しいです。

部品について(補足)

シリーズ第1回の記事「(略)#1」の「部品について(補足)」の項目を読んでください。

イコライザIC TA2078P 購入情報(2010/04現在)
イーエレ 210円 ICのページで「ステレオイコライザ用IC」の分類。
千石電商 180円 トップページ右上「商品検索」欄から「TA2078P」で検索。


ヘッドホンアンプ・プラスアルファ #2 部品一覧 (回路図はここをクリック
部品名 部品番号 個数 参考価格/備考
電源部
OPアンプ U1 LM358 1 5個100円(秋月電子)
抵抗 R1,R2 4.7kΩ [黄紫赤金] 2 1個5円/100個100円
抵抗 R15 1kΩ [茶黒赤金] 1 1個5円/100個100円
LED D3 -- 1 パイロットランプ
電解コンデンサ C1 220uF 35V 1 20円
電解コンデンサ C17 1uF 50V 1 10円
電源スイッチ SW1 -- 1 --
DCジャック DCJ1 -- 1 --
電池スナップ -- 006P用 1 20円
イコライザ部
イコライザIC U4 TA2078P 1 210円(イーエレ)
電解コンデンサ C7,C8 10uF 50V 2 10円
電解コンデンサ C15 47uF 35V 1 10円
積層セラミックコンデンサ C16 0.1uF 1 10個100円
マイラーコンデンサ C9,C12 0.022uF 2 1個10円
マイラーコンデンサ C10,C13 2200pF 2 1個10円
マイラーコンデンサ C11,C14 0.068uF 2 1個15円
スイッチ SW2,SW3 -- 2 --
ステレオミニジャック PHJ1 径3.5mm 1 50円
ヘッドホンアンプ部
OPアンプ U2 NJM4580DD 1 50円(秋月電子)
金属被膜抵抗 R3,R5,R6,R8 10kΩ [茶黒黒赤茶] 4 1個10円
金属被膜抵抗 R4,R7 1kΩ [茶黒黒茶茶] 2 1個10円
無極性電解コンデンサ C2,C3 2.2uF 50V 2 1個20円
2連ボリューム VR1 10kΩ Aカーブ 1 --
ボリュームのツマミ -- -- 1 --
ステレオミニジャック PHJ2 径3.5mm 1 50円
VUメータのアンプ部
電解コンデンサ C4 2.2uF 50V 1 10円
電解コンデンサ C5 1uF 50V 1 10円
抵抗 R9,R10 2.2kΩ [赤赤赤金] 2 1個5円/100個100円
抵抗 R11 10kΩ [茶黒橙金] 1 1個5円/100個100円
抵抗 R12 1kΩ [茶黒赤金] 1 1個5円/100個100円
抵抗 R13 100kΩ [茶黒黄金] 1 1個5円/100個100円
半固定抵抗 VR2 100kΩ [104] 1 30円
小信号用ダイオード D1,D2 1N4148 2 50個100円(秋月電子)
VUメータ部
ディスプレイドライバ U3 LM3915 1 320円(イーエレ)
LEDアレイ LED1-10 -- 1 --
抵抗 R14 10kΩ [茶黒橙金] 1 1個5円/100個100円
電解コンデンサ C6 10uF 50V 1 10円

次回はAVR(マイコン)とLCD(液晶モジュール)を組み合わせる予定です。
単にAVRでTA2078Pを制御するだけか、LM3915の機能まで持たせるか、
さらにLEDアレイからLCDに置き換えるか…
どこまで作り込むかはまだ決めていません。


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