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LCDモジュールを3.3V/3V回路で使う

2010年3月〜4月 ※2013/02 ページデザイン変更
LCDモジュールSD1602を改造なしに3.3V/3V回路で動作させる実験。
チャージポンプによる2通りの方法を実験しました。
負電圧を生成する方法、昇圧する方法。


実験の様子(予告編)
電子工作でお馴染みのキャラクタ液晶モジュールSC1602やSD1602は5V動作の仕様。これを、抵抗を付け替えたりの改造で3V系(3V, 3.3V)の回路で動かす記事がありました。先人は偉大です。さらに調査すると、改造なしで動かせることが分かりました。データシートにヒントがありました。

コントローラHD44780の電圧の定格は2.7V〜5.5Vです。3V系でもコイツは動作しているのですね。あとは液晶さえ何とかなれば、表示が見えるということです。SD1602Hのデータシートを見ると、どうやらVDD(電源)とVo(コントラスト)の差が4.5Vあれば動作するようです。Voに-7Vを加えている回路の例も掲載されていました。


左:VDDに3.13V  右:Voに-0.93V  その差4.06Vで動作中。



手っ取り早くUSBの5Vを抵抗で分圧し、仮想GNDと正負電圧を作り、実験してみました。
約4VでSD1602HUOBが動作することを確認しました。

AVRの工作などで3V系回路を組んで使うときは、仮想GNDではなく、チャージポンプで負電圧を作り出す方法がよいでしょう。クロック発生のためI/Oピンを1つ使います。そしてダイオード2個とコンデンサ2個で…
3V反転で-3V → ダイオード2個の電圧降下で -(3-0.6*2) = -1.8V くらい作れるはず
この辺を実験して追記しようと思います。

ここまでが3月公開の予告編でした。この先が4月公開の本編です。


実験の対象とするLCDモジュールについて
16文字x2行のキャラクタ液晶SC1602/SD1602が実験対象です。SD1602HOUBを使います。LCDのコントローラはKS0066/HD44780/同等品です。

今回の実験に関係ある電気特性のまとめ(複数の関連データシートから抜粋)
ITEM SYMBOL CONDITION MIN TYP MAX UNIT データシート
Power Supply Voltage VDD -- 4.5 5 5.5 V SUNLIKE t8.9
LCD Power Supply Voltage VLCD VDD-V0 3 -- -- V SUNLIKE t8.9
LCD Operating Voltage VDD-VO T=25℃ -- 4.5 -- V SD1602H 白黒原稿
Supply Voltage VDD-VSS -- 2.7 5 5.5 V SD1602H 白黒原稿
4.7 5 5.3 V SD1602H カラー原稿
4.2V LED FORWARD VOLTAGE SD1602H カラー原稿
Low power operation support -- 2.7 to 5.5V HD44780
※VO,V0はどちらもContrast Adj.を指しています。表記の揺れ。以降、Voと記述します。
※白黒原稿/カラー原稿とはpdf文書の原稿色のことです。LCDモジュールの表示色とは関係ありません。


SUNLIKE t8.9
SUNLIKE社提供。LCD製品の代表データシート。「DC & AC Characteristics」のページより。
SD1602H カラー原稿
SUNLIKE社提供。LCD製品一覧のページからリンクされている、製品ごとの概要紹介。
SD1602H 白黒原稿
ネットで拾ったデータシート。見たところ「SD1602H カラー原稿」の旧版だと思われる。

SUNLIKE社提供の2つは安全運転、白黒原稿は包み隠さずといったところでしょうか。主にSD1602H 白黒原稿を根拠にして実験します。それによると、VDD-VSSが2.7V以上でコントローラ(ロジック部)が動作し、VDD-Voが4.5Vで液晶部が動作します(下記LCD図の左側)。SUNLIKE社提供のデータシートの記述内容はLCD図の右側です。


SD1602HUOBにはバックライト(LED)が付いています。順方向電圧が4.2Vで点灯します。LCD本体との電位関係は特になさそうです。3V系の回路で4.2Vのバックライトまで点灯…やってみましょう。

実験回路について
電源
お手軽にUSBの5Vを抵抗で分圧して得た3Vを実験回路の電源とします。この方法は負荷(LCDモジュール本体、バックライトのLED)をかけると電圧が変わってしまうので、測定の時はその都度3Vに調節し直すことにします。

回路の内容
実験回路は「LCD応用例 カレンダー付き時計〜外字登録を活用しよう〜」のカレンダー付き時計です。ATtiny2313は内部クロック1MHz(8MHzの8分周)で動作しています。それに加え、ヒューズビットを設定してPD2にシステムクロック(1MHz)を出力するようにします。このクロックでチャージポンプを動作させます。

実際の応用時にクロック出力のピン(ATtiny2313ではPD2)が空けられなければ、適当なピンから何らかの方法でクロックを出力してやる必要があります。
デューティ比50%にするのがコツです。タイマ割り込みでやれば確実ですし、AVRにはPINレジスタに1を書き込む度に出力が反転する機能もあります(ATtiny,ATmegaシリーズ)。この方法が使えないか検討してみるのもよいでしょう。

【参考】システムクロックの出力を確認する
ATtiny2313で VCC = 3.0V のとき、PD2の電圧 = 1.5V でした(テスターで測定)。
デューティ比50%でクロックが出力されていることが分かります。

使用部品
チャージポンプ(Switched Capacitor/スイッチト・キャパシタ)の回路に使った部品について。
コンデンサは0.1uFの積層セラミックコンデンサ。ダイオードは小信号用ダイオード1N4148。

ショットキバリアダイオードを使えば電圧降下が小さいので電圧生成の効率はよくなりますが、この実験では敢えて、ありふれたダイオード1N4148を使っています。記事中の理論値計算ではダイオードの電圧降下を0.6Vとしています。

LCDはSD1602HUOBです。オレンジ色のバックライト(LED)付き。
LEDには電流制限抵抗20〜100Ωを入れます(上限40mA)。

負電圧を生成して+3.0Vと-1.8Vで動かす
チャージポンプで負電圧を生成する。

回路図

電源電圧VCC = 3.0V
LCDのVDD = VCC
LCDのVSS = 0V
LCDのコントラストVo = 生成した負電圧から調節
負荷をかけた状態(LCDを接続、動作中)
VCC = 3.05V
VDD = 3.05V

Voには下記の負電圧が掛かっているので、液晶画面が表示されている。
チャージポンプによる負電圧Vch = -1.86V
【参考】
Vchの理論値 = -(VCC - 0.6V * 2) = -(3.05 - 0.6 * 2) = -1.85V

Vo = -1.00V
Voに流れる電流 = 0.21mA

Voは見た目で丁度よい濃さに調節した値。
LED点灯時
Vch = -0.95V
Vo = -0.95V (最も濃くなる設定)
LEDの電圧 = 3.05 - (-0.95) = 4.00V

Voに流れる電流 = 0.21mA
LEDに流れる電流 = 3.53mA

バックライトなしだと、コントラストが調節できるほど電圧の幅に余裕があります。
バックライトありだと、3.0Vの回路ではコントラストもLEDの明るさも調節できる余裕はなく、ギリギリのバランスで動作している感じです。3.3Vの回路なら少し余裕が持てるかもしれません。

+3.0Vを昇圧して+4.8Vで動かす
チャージポンプで倍電圧を生成する。

回路図

電源電圧VCC = 3.0V
LCDのVDD = 生成した倍電圧
LCDのVSS = 0V
LCDのコントラストVo = VCCから調節
負荷をかけた状態(LCDを接続、動作中)
VCC = 3.02V
VDD = 3.02V
Vo = 0V

VDD-Vo間の電圧が足りないので液晶画面は表示されない。
チャージポンプによる倍電圧Vch = 4.73V
【参考】
Vchの理論値 = VCC * 2 - 0.6V * 2 = 3.02 * 2 - 0.6 * 2 = 4.84V

VDD = 4.73V
Vo = ほぼ0V

VDD-Vo間が4.5V以上になり、液晶画面が表示された。
極わずかに濃さを調節したのでVoは0Vピッタリではない。
LED点灯時
Vch = 4.01V
Vo = 0V (最も濃くなる設定)
LEDの電圧 = 4.01 - 0 = 4.01V

LCDのVDDに流れる電流 = 0.67mA
Voに流れる電流 = 0.21mA
LEDに流れる電流 = 3.64mA
2010/04 追記: 2,3段目の説明を勘違いしていたので訂正しました。

「負電圧を生成する方法」と同じことが言えます。それと、気にかかる点があります。
ATtiny2313は3.0Vで、LCDは4.7Vで動作しています。信号レベルが違うので、データ線、制御線の配線に何か対策した方が安全かもしれません。適当処置なら抵抗を入れておくとか?


◆ ◆ ◆
バックライトなしなら5Vの回路で使用するときと同様の感覚で使えます。
バックライトありだとチョット厳しいですが、使えないことはありません。
どちらにしても昇圧する方法より負電圧を生成する方法が使いやすいです。


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