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スイッチングレギュレータを使った可変安定化電源

2010年12月 ※2011/08 記事を改訂
「シガーソケット-USB充電器」を改造して可変安定化電源を作りました。
電源そのものではなく電圧コンバータです。ちょっと面白く仕上げてみました。

関連記事 2013/07 追記
NJM2360を利用した昇圧回路
本記事に出てくるMC34063と互換性があるIC、NJM2360を使った昇圧回路の作例です。


三端子レギュレータ
単三乾電池2本で動かす物を製作しているとき、開発中の電源として3Vの安定化電源が欲しいと思いました。

三端子レギュレータTA48M033Fを使った3.3Vの電源は以前から活用しています。しかし3Vのものは持っていません。TA48M03F(3.0V)で同じ物を作ろうかと思いましたが、どうせなら可変タイプにした方が後々便利そうです。
PC 3ピン ファンコントローラ」の記事では可変タイプの三端子レギュレータLM317を使った工作をしました。


TA48M033F 3.3Vのコンバータ LM317 可変タイプのコンバータ

LM317には1.5Aの電流が流せます。もっと電流を流せるものだとLM350(3A), LM338(5A)があります。
これらを使って安定化電源を作ります。


…作るつもりでした。が。
LM350/LM338のデータシートを探していたら、「100円ショップの」スイッチングレギュレータを使った可変安定化電源の作り方を見付けました。その工作は何年も前からいくつものサイトで紹介されていて、どうやらポピュラーなもののようです。興味が湧いたので自分も作ってみました。

スイッチングレギュレータ
自動車のシガーソケットから携帯電話や携帯ゲーム機を充電する機器、その中にスイッチングレギュレータが使われています。12Vないし24Vを5Vに変換しています。こんなに都合のよいものが100円ショップで売っていたなんて!
「USBポート付 DC充電器(シガーソケット-USB充電器)」「電池の残量”測る君”」を購入。計210円。

100円ショップで手に入るシガーソケット用の電圧コンバータ類。それに使用されているスイッチングレギュレータはMC34063(の互換品)が定番のようです。今回購入した充電器のICには「34063API」と印刷されていました。
電圧を可変させる方法(ここでは降圧/Step-Down Converter)は可変タイプの三端子レギュレータと同じで、ICから出力される基準電圧1.25Vに対して抵抗2つの比で出力電圧を決めます。


Vout = 1.25 * (1 + R2/R1) [V] ※R1,R2はデータシートの回路図で示される抵抗

MC34063のデータシートで5V出力の参考回路は、R1 = 1.2kΩ, R2 = 3.6kΩ となっています。
今回購入した充電器では、R1 = 1kΩ, R2 = 3kΩ でした。
Vout = 1.25 * (1 + 3kΩ/1kΩ) = 5V …なるほど、USBの電圧とピッタリ。

←MC34063データシートより抜粋、一部編集。

改造する抵抗を特定する
基板上の抵抗にはR1,R2,R3とシルク印刷がありましたが、これらは回路図の同じ番号を指しているわけではありません。回路図のR1,R2は基板上のどの抵抗なのか? それは基板の配線パターンを追って判断するしかありません。MC34063のピン5につながった2つの抵抗のうち、その先がGNDにつながっている方が回路図のR1、出力端子につながっている方がR2です。
※データシートの回路図はICの裏側から見たピン配置で書かれています。基板のハンダ面から見た図と思えばよいです。

改造内容
注意:
以下の説明にあるR1,R2はデータシートの回路図・数式のR1,R2を指します。
基板のシルク印刷のR1,R2ではありません。

1.
充電器を分解し、R1にあたる抵抗を確認します。
値が 1kΩ, 1.2kΩ, 1.5kΩ であれば、その抵抗を交換する必要はありません。
他の値だった場合は上記3つのどれかに交換します。

2.
R2にあたる抵抗を取り外し、代わりに可変抵抗を取り付けます。可変抵抗の値は出力したい電圧の最大値によって異なります。Voutの式からR2を逆算します。
※出力電圧の最大値は、およそ 入力電圧-1.6V程度 までのようです。詳しくはデータシートで確認してください。
出力電圧の最小値は1.2Vです(理論値)。実際は抵抗の誤差があるため、1.35Vなどとなります(実測例)。

例:
9VのACアダプタを入力電源とした場合、可変抵抗R2 = 5kΩ で Vout = 1.2V〜6.25V(計算値)
※誤差30%品の半固定抵抗5kΩで測定したところ、出力の最大値は6.19Vでした。

3.
これまた100円ショップで売っている、乾電池の残量計。それに付いているメーターを電圧計として取り付ける製作例があったので真似しました。
今回購入した充電器には出力確認用にLEDが付いていました(電流制限抵抗 = 1kΩ)。それと入れ替える形でメーターを取り付けます。電流制限抵抗も取り外し、数百Ωに変更します。この抵抗によってメーターの振れ幅が変わります。仮組みして電気を通し、可変抵抗を回してメーターを動かし、振れ幅の様子を見て抵抗値を決めます。

自分はこうしました
R1 = 1.2kΩ, R2 = 5kΩ(半固定抵抗), メーターの電流制限抵抗 = 220Ω。
入力電源として9VのACアダプタ、および、PCのUSBからの給電(5V)とする。
※入力電圧が5Vのとき、出力電圧の最大値は3.28Vでした。

完成品紹介
充電器から基板を取り出し、改造し、ボリューム(可変抵抗)とメーターを小ケースに収める。
という製作例が普通なのですが、充電器のケースを見ているうちに「これに収めたら面白そうだ」と思い、挑戦してみました。収まったと言っていいかどうかはさておき、ご覧の通り完成です。


ちなみに、基板にはトランジスタと抵抗の空きパターンがありました。データシートから察するに、部品追加とジャンパー線の変更で大電流出力に対応できそうな、お得な基板のようです。※データシートには具体的な回路図が出ています。




撮影時は適当に調節しましたが、半固定抵抗を丁寧に回せばきちんと3.00Vが出ます。もちろん1.50V, 1.80V, 2.70Vなども。


【感想】
面白く出来上がりましたが、メーター部に難ありでした。
本体が丸いので転がってしまい、その度にメーターの針が大きくずれます。
目盛りを書き込むときはメーターを水平に置いて測定しましたが、使用中は水平ではないので針が全然違う点を指したりします。もっとも、針が揺れたからといって出力電圧が変わってしまうわけではないので、安定化電源としては正しく使用できます。安価に、手軽に、きちんと動作するものが作れたと思います。

ちょっと試すくらいのつもりだったので、R2は可変抵抗(ボリューム)ではなく、手持ちの半固定抵抗を使いました。半固定抵抗はその名の通り、一度値を調整したら後はほとんどいじらずに使うものです。頻繁に回しているとすぐに緩くなり、壊れます。今回作ったものは入力電源をUSB給電(5V/500mA)とし、3.0V出力固定で使った方がよいかもしれません。
※メーターを取り外して半固定抵抗を付け直して…いや、それなら100円でもう1個作った方がよさそうだ。

おまけ
後日。100円ショップで、今度は「USB充電用電池BOX」を買ってみました。単三乾電池2本(3V)をUSB(5V)に昇圧して携帯電話や携帯ゲーム機などを充電する機器です。ひょっとしてMC34063の昇圧回路(Step-Up Converter)が入っているのではないかと思ったのですが、違いました。

IC表面の印刷
B 8530
50168


ICはハンダ面に実装されています。IC表面の印刷で「B」は、何かそんな形のマークです。
「8530 昇圧」で検索したところ、同種のICがaitendoで売っていました。商品案内ページにデータシートもありました。
それによるとICの型番はBL8530。※あぁ、それでBみたいなマークか。
「50xxx」は5.0Vに昇圧するバージョンのようです。まさにUSB(5V)向けというわけです。

◆ ◆ ◆
普段、マイコンなどを使った電子工作ではUSB給電(5V/500mA)で作業しています。
今回製作した可変安定化電源は同じように使えそうです。しかしモーターを回すなど
大電流が必要な場合は、今回の製作物でもUSB給電でも無理があります。
そのときは大電流が流せるLM350/LM338の可変安定化電源を使おうと思います。


(C) 『昼夜逆転』工作室 [トップページへ戻る]
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