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LM317使用 可変電圧レギュレータ(簡易電圧計・簡易電流計付き)

2011年4月
LM317Tを使った電圧源(電圧レギュレータ)を作りました。「スイッチングレギュレータを使った可変安定化電源」の最初に出てくる回路図のものです。それだけだと「PC 3ピン ファンコントローラ」で作ったものと変わらないので、電圧計と電流計を組み込みました。
電圧計が付いていると出力電圧を見ながら調整できるので便利です。
電流計が付いていると接続した回路の消費電力が分かります。面白そうです。


動作中の様子

※一部コマ落ちしています。
電源は例としてACアダプタ9Vです。本機器に電源スイッチはありません。表示は上段が電圧(V単位)、下段が電流(mA単位)です。起動時に3秒間それを表示します。

ボリュームを回し、最小値から最大値まで。LM317Tの仕様では最小値1.25Vです。最大値は9V-3V=6Vが目安ですが7.6V出ています。

出力を5Vに調整し、自作温度計を接続します。
スイッチを押して電流を測定。134mAです。
ちなみにこの温度計のバックライトは5V時に110mA流れます。マイコンや温度センサに比べ、LEDが如何に電気を食うかが分かります。

この温度計の消費電力は 5V * 134mA = 670mW となります。

起動中は常時、連続して電圧と電流を測定しています。
電流計はスイッチを押している間だけ機能し、それ以外では0.0mAと表示します。
※スイッチオフのとき電流計のA/Dコンバータは入力0Vを測定し続けていることになる。

電圧計は、10V未満は小数第二位まで、10V以上は小数第一位まで表示します。
[1.25]〜[9.99], [10.0]V〜
電流計は、100mA未満は小数第一位まで、100mA以上は整数部のみ表示します。1A以上もmA単位で表示します。
[0.0]〜[99.9], [100]〜[999], [1000]mA〜

可変三端子レギュレータ LM317/LM350/LM338について
電流制限値 Min Typ. Max
LM317T 1.5A 2.2A 3.4A
電流制限値 Min Typ. Max
LM350 3A 4.5A データシートに記載なし
LM338 5A 8A データシートに記載なし

LM317にはいくつかバリエーションがあります。この記事ではTO-220パッケージのLM317Tを対象とします。
LM317Tの電流制限について時々見かける、「LM317Tに流せる電流は最大1.5A」という説明は誤りです。
正しくは「LM317Tは1.5A流せることが保証されている」です。2.2A流して構いません(典型値)。
「制限値の8割くらいまでで使うのがよい」という説明も見かけます。具体値は 3.4A * 8割 = 2.7A となります。なるほど、典型値2.2Vというのも納得です。まとめると、「LM317Tに1.5A流すのは余裕でセーフ」ということです。

もっと大きな電流が必要ならLM350(3A), LM338(5A)が使えます。ただし、これほど大きな電流だと周辺の部品−−コネクタやスイッチ、ケーブル選びが難しくなります。3A, 5Aに耐えられる物を選ばなくてはなりません。
DCジャックやスライドスイッチ、ヘッダーピンやコネクタ類は、2Aに耐えられる物なら多く見つかります。
可変電圧源を作るにあたり、モーターやスピーカーを直接駆動するのでなければLM317Tを使うのがよさそうです。

電圧計
抵抗による分圧
可変電圧源の出力を見るための簡易的な電圧計は、マイコンの内蔵A/Dコンバータ(以下ADC)を使って作れます。
ADCの基準電圧より大きな電圧を測定するには、その電圧を分圧してADCに入力します。分圧抵抗の値はADCの入力インピーダンスを考慮して決めます。例えばAVRマイコン ATmega88はADCの入力インピーダンスが32kΩなので、分圧抵抗も十kΩオーダーで決めればよいでしょう。

電圧計の製作例を探すと、分圧抵抗の例として「10kΩ:91kΩで1/10にする」といった説明を見かけます。ADCの計算値を10倍すれば測定電圧が求まるというものです。しかしマイコン内で計算するなら、「約」ではなく「ちょうど」になる抵抗の組み合わせの方がよいと思います。※(10k + 91k) / 10k = 10.1倍。「ちょうど10倍」ではない。

【分圧抵抗の組み合わせ例】
条件:LM317Tの入力に15V, 12V, 5VのACアダプタを使う。出力は3V低くなり、12V, 9V, 2Vになると仮定する。
※実際には2V程しか下がらなかったりするが、低ドロップアウト型でない三端子レギュレータは一般的に3V下がるものと考える。

抵抗値 分圧比 ADC計算値の例(左辺の電圧はVoutの値)
10kΩ:30kΩ 10k/(10k+30k) = 1/4 9V * (1/4) = 2.25V 2V * (1/4) = 0.5V
15kΩ:75kΩ 15k/(15k+75k) = 1/6 12V * (1/6) = 2V 2V * (1/6) = 0.33V

LM317Tの電圧入出力
(3V下がると仮定)
Vin 15V 12V 5V
Vout 12V 9V 2V

ADCの基準電圧を2.5Vとしたとき、いずれの分圧比でも程良く収まります。そして「ちょうど4倍」「ちょうど6倍」で測定電圧が求まります。逆に、基準電圧の4倍,6倍までしか測定できないことに注意しましょう。例えば分圧比を1/4としたとき、測定可能な最大電圧は 2.5V * 4 = 10V です。※ADCは基準電圧以上の電圧を表せないので、10V以上は全て10Vと計算される。

測定単位とADCの基準電圧の関係
今回の製作ではマイコンにATmega88を使い(ADCの分解能は10bit)、動作電圧を3.3Vとしています。LM317Tとは別の三端子レギュレータから供給します。安定した電圧なのでADCの基準電圧として使っても構いません。
この場合、ADCの1ステップは約3.3mVを表します。測定電圧は3.3mV以上から検出でき、3.3mV刻みで測定されます。分圧比が1/4だったとすると、3.3V * 4 = 13.2Vまで測定できます。

電圧をより正確に測定するには細かい刻み幅の方がよいです。ADCの分解能は変えられないので基準電圧を小さくします。その目的でシャントレギュレータを使い、基準電圧を2.5Vとします。
この場合、ADCの1ステップは約2.5mVを表します。測定電圧は2.5mV以上から検出でき、2.5mV刻みで測定されます。分圧比が1/4だったとすると、2.5V * 4 = 10.0Vまで測定できます。

小さな電圧を正確に測定するには
測定したい電圧が数十mV、数mVと小さい場合、分圧せずにそのままADCに入力します。しかしADCの刻み幅もそれに近い値なので(約2.5mV)、正確に測定できません。このようなときはOPアンプを使います。
例えば、測定する電圧をOPアンプで10倍に増幅してADCに入力し、計算値を10で割るとOPアンプを通す前の電圧が求まります。見かけ上、ADCの刻み幅が1/10単位になったということです。※2.5mV * 1/10 = 0.25mV刻みで測定したことになる。

このようにすれば1mVでも測定できるようになります。ただし測定可能な電圧の最大値は、基準電圧の1/10までになってしまいます。※10倍に増幅した値が基準電圧以下でなければならないため。基準電圧が2.5Vなら250mVまでしか測定できない。
また、OPアンプの増幅率を決める抵抗の誤差が計算で拡大され、そのまま測定誤差につながります。

どんな電圧計を作るか
抵抗による分圧にするか、OPアンプにするか。そこで迷うなら両方を組み込んで、測定レンジの切り替えができる電圧計にすればよいと思います。マイコンを活かして自動レンジ切り替えもできそうです。
今回の製作では複雑さを避け、数mVの小さな電圧は測定しないことにして、抵抗による分圧を採用しました。

自作電圧計の性能レポート
グラフは、LM317Tの出力電圧を変化させたときの様子です。電源はACアダプタ12V, 9V。
テスターの読みを基準とし、ADC変換値から算出した値(測定値)のズレ具合を見ます。

LM317Tの出力電圧(電源:ACアダプタ12V) LM317Tの出力電圧(電源:ACアダプタ9V)



ADCの基準電圧はシャントレギュレータの2.5V。その値を境に、出力電圧が大きい範囲で測定値は1%ほど大きくなり、小さい範囲で1%ほど小さくなりました。マイコン内で計算する際にそれを補正することにします。

ACアダプタ12Vのグラフにおいて、出力電圧が10V以上のとき測定値が目立ってズレています。これはADCの基準電圧が2.5Vで、分圧比が1/4であるためです。この電圧計では 2.5V * 4 = 10V までしか測定できません。
そもそも入力電圧が12Vなら、12V - 3V = 9V までがLM317Tの出力として当てにできる電圧です。

電流計
シャント抵抗
電流計は電流を直接測定するのではなく、固定抵抗の電圧降下を測定し、オームの法則から計算で求めます。原理的に電圧計と同じです。この目的の抵抗をシャント抵抗と呼びます。
電源から流れ出る電流を測定するには、電源ライン上にシャント抵抗を入れます。このときシャント抵抗の電圧降下の分だけ回路に掛かる電圧が小さくなります。そのためシャント抵抗はmΩ単位の小さな値が理想的です。

測定単位とADCの基準電圧の関係
測定できる電流の最小値は、電圧計のときと同様、ADCの基準電圧で決まります。
基準電圧 2.5V,シャント抵抗 1Ωとすると、ADCの1ステップは約2.5mVを表します(10bitのADCとして)。
このときの電流は 2.5mV / 1Ω = 2.5mA …測定電流は2.5mA以上から検出でき、2.5mA刻みで測定されます。
※1mA単位やそれ以下の電流を測定するには、OPアンプを使ったり、分流したりする。電圧計と同じ原理なので工夫の仕方も同様。

シャント抵抗の入れ方と測定方法
シャント抵抗を回路に直列に入れるとき、回路から見て電源側に入れるか(ハイサイド)、グランド側に入れるか(ローサイド)の2通りが考えられます。この点について、下記説明が詳しいので参照してください。
テック君の豆知識「シャント抵抗器(SMD)について」(RSコンポーネンツ社 オンライン技術情報ページ)

ハイサイドで測定する ローサイドで測定する

※[+][-]は便宜上の端子名。
 正・負電圧を出力するという意味ではない。


【ハイサイドで測定する】
シャント抵抗(R-shunt)の電圧降下を測定します。前後に電圧計を置いて引き算するだけです。
この回路においてVoutの電圧はADCの基準電圧より高いので、分圧してADCへ入力します(R1a,R1b;R2a,R2b)。
シャント抵抗の電圧降下をその抵抗値で割れば(オームの法則)、回路に流れる電流が求まります。

厳密には、分圧抵抗の誤差によりADC1とADC2の電圧計が同じ性質にならず、電流計の精度に影響を与えます。
※どのみち測定器に誤差は付きものだ、誤差1%品の抵抗で許容(妥協)する、…いろいろな意見があると思う。

【ローサイドで測定する】
シャント抵抗(R-shunt)の電圧降下を測定します。片方はGNDなので測定は1カ所です。
この回路においてシャント抵抗の値は十分小さいので(1Ω以下)、測定する電圧もADCの基準電圧より小さくなります。そのため分圧抵抗は不要で直接ADCへ入力できます。測定した電圧はシャント抵抗の電圧降下そのものなので、その抵抗値で割れば(オームの法則)、回路に流れる電流が求まります。

ハイサイドの方法では電圧を2カ所測定する必要がありましたが、ローサイドの方法だと1カ所で済みます。分圧抵抗も不要です。このことから、電流計の精度はハイサイドの方法より高くなることが期待できます。
※あくまで上記回路で比べた場合。常にハイサイド検出よりローサイド検出の方が精度が高いと言っているわけではない。

どんな電流計を作るか
今回の製作では複雑さを避け、またそれなりに精度が出せればと思ったので、ローサイドの方法を採用しました。
ところで、シャント抵抗は値が小さいといえど抵抗器であるため、接続した回路で電流が変化するとシャント抵抗の電圧降下が変化します(ハイサイド、ローサイド関係なく)。このとき電圧レギュレータは一定の電圧を保っているので、回路に掛かる電圧が変化することになります。つまり、回路から見ると定電圧源に接続していることにならないのです。


そこで、電流を測定したいときだけシャント抵抗が回路につながるようにしました。スイッチの切り替え忘れがないよう、また回路の性質上、プッシュ・オフスイッチを使います(押してオフ、放してオン)。
左図はローサイドで測定する回路です。通常の状態でシャント抵抗はショートしており、そちらに電流は流れません。このとき回路のGNDは電圧レギュレータのGNDと共通になります。
スイッチを押すとシャント抵抗が有効になり、電流が測定されます。このとき回路のGNDは電圧レギュレータのGNDから浮いた状態になります。

電流計のシャント抵抗の決め方
抵抗値
シャント抵抗の電圧降下が回路に及ぼす影響を小さくするため、シャント抵抗はmΩ単位の小さな値が理想的ですが、その点をあまり気にしなければ1Ωでも電流計は作れます。

【例1】電源電圧 12V,回路に流れる電流 50mA,シャント抵抗 1Ωとすると、
電圧降下は 1Ω * 50mA = 50mV …12Vに対する割合は0.4%。回路に掛かる電圧は12V→11.95V。

【例2】電源電圧 5V,回路に流れる電流 200mA,シャント抵抗 1Ωとすると、
電圧降下は 1Ω * 200mA = 200mV …5Vに対する割合は4%。回路に掛かる電圧は5V→4.8V。
この条件でシャント抵抗を0.47Ωとすると、
電圧降下は 0.47Ω * 200mA = 94mV …5Vに対する割合は1.9%。回路に掛かる電圧は5V→4.9V。
4.8Vから0.1V改善されます。
※この違いを大きいと見るか、全然変わらないと見るか。自分は「ミニモーターギヤボックスとモーター制御」で0.1Vの違いは大きいと感じた。

発熱量(消費電力)
シャント抵抗は回路に直列に入れます。電圧レギュレータにLM317Tを使うとすると、シャント抵抗には1.5Aの電流が流れることが考えられます。抵抗に流れる電流が1Aオーダーともなると発熱量も結構な大きさになります。シャント抵抗を決めるとき、値だけでなく発熱量(すなわち消費電力)も考慮しなければなりません。
※抵抗がどれだけ発熱するか。その熱量に抵抗が持ちこたえられるか。

消費電力は電流の2乗に比例するので、電流が1Aを超えると急激に値が大きくなります。※P = R * I^2 [W]
例えばLM317Tを使い、1Ωの抵抗に1.5A流れた場合、消費電力は 1Ω * 1.5A^2 = 2.25W です。※3W品が必要。
LM350を使い、1Ωの抵抗に3A流れた場合、消費電力は 1Ω * 3A^2 = 9W にもなります。

1Ωの抵抗に1Aが流れれば1Wの消費電力。電子工作でよく使う1/4Wのカーボン被膜抵抗は使えません。
ホーロー抵抗やセメント抵抗は数W〜数十Wに耐えられますが、シャント抵抗に使う小さな値は無さそうですし、物理的に大きいので基板に組み込むのが厄介です。
お勧めは酸化金属被膜抵抗です。数Wの消費電力に耐えられ、物理的に小さめで、1Ωより小さな値も入手しやすいです。ただし、大抵は誤差5%品です。※通販では千石電商、共立エレショップ、マルツパーツ館が品揃え豊富。

製作について
回路図 (1000x750)

プログラム
ダウンロード VAMeter_v100.zip (hexファイルとCのソース)

ADCの動作実験で作ったプログラム(AVR ATmega88 A/Dコンバータ応用例 温度計)を拡張したものです。
lcdlib.c/.h は自作LCDライブラリです。データ4bitを逆並びにする関数を追加しましたが、今回は使用していません。

マイコン AVR ATmega88の動作
動作電圧は3.3V。動作クロックは1MHz(内蔵8MHzの8分周)。
チャージポンプのクロックを得るため、システムクロック(1MHz)を出力するようヒューズビットで設定しています。それ以外は工場出荷設定です。

回路図と部品の説明
入力はACアダプタ 5V〜12Vとします。出力は3系統です。
 (1) スルー …ACアダプタからの入力電圧をそのまま出力。
 (2) 3.3V …三端子レギュレータの出力電圧を出力。
 (3) 可変 …LM317Tで設定した電圧を出力。出力範囲は、約1.2V〜{ACアダプタの電圧 - 3V}

(1)スルー出力の電解コンデンサの容量は、(2)3.3V三端子レギュレータの出力側の値と揃えただけで、他に意味はありません。本当にスルーとするならこの電解コンデンサは無くてもよいです。

(2)の三端子レギュレータ(U2)はAVRとLCDの動作電圧を作ることが主目的です。ついでにそれを出力しています。
入力電圧5V〜12Vを5V以下に落とすために3.3Vの低ドロップアウト型の三端子レギュレータを使います。
AVRとLCDで200〜300mA必要だと考え、500mAタイプのTA48M033Fを選びました。1Aタイプなど大きな電流を流せるものでも構いません。※低ドロップアウト型であること。
出力側の電解コンデンサは33uFないし47uFが適当です。

(3)のLM317Tが本機器の要です。データシートの基本回路そのままです。最小部品構成の方ではなく、ADJ端子に掛かる電解コンデンサと保護ダイオードを追加したバージョンの方を採用しました。

【LM317Tの周辺】
出力電圧を設定する可変抵抗(VR1)の値は、入力電圧が最大12Vということから2kΩ(以上)に決まります。
入力電圧12V→三端子レギュレータで3V下がって出力電圧9V。LM317Tの計算式から約1.5kΩ以上必要。
よって2kΩ。入力電圧を15Vないし24Vとするなら、5kΩの可変抵抗に変更します。
※2kΩの可変抵抗が入手しにくければ、3kΩ,5kΩでも可。一応、2kΩは千石電商で120円(ツマミ付き)。
※最初から5kΩでも回路上は問題ないが、軸の回転の前半1/3しか使わないことになるので調整しにくい。


2kΩの可変抵抗は、固定抵抗と組み合わせる代案もあります。参考回路では1kΩの固定抵抗で例示しましたが、実際は誤差を考慮して750Ω〜910Ωにした方がよいでしょう。※1kΩ+-10%程度の範囲の値が作れない可能性があるため。

出力電圧を設定する固定抵抗(R1)は240Ωでなくても、数百Ωならよいです。自分は手持ちの220Ωを使いました。
※kΩ単位ほど大きい値だと都合が悪い。理由はデータシートに書いてある。

ダイオード(D1,D2)は1Aを目安とした一般整流用ダイオードです。回路図では1N4007ですが、自分は手持ちの1S3(ショットキバリアダイオード:1A/30V)を使いました。※1N4007を持っていなかったので。SBDである必要はなく、1Aという点だけで1S3。

出力側の電解コンデンサは、データシートでは1uFのタンタルコンデンサか、(高周波領域でそれに相当する)25uFの電解コンデンサを勧めています。25uFという容量はないので33uFか47uFでよいでしょう。

異常電流(回路のショートによる過大な電流)から保護するため、(3)LM317Tの経路にポリスイッチ(リセッタブルヒューズ)を付けています。今回の製作物では保持電流1.6A,トリップ電流3.2Aのポリスイッチを使いました。LM317Tの定格電流(1.5A保証、絶対最大定格3.4A)に適合しています。
(1)スルー出力と(2)3.3V出力の方は、電流の最大値が決まらないのでポリスイッチを付けていません。
※(1)スルー出力はACアダプタの定格による。(2)3.3V三端子レギュレータは大電流用のものに変更する場合を考慮。

【AVRの周辺】
アナログ電圧入力(AVCC)安定のためのインダクタ(L1)は省略してもよいです。恐らくほとんど影響はないでしょう。

LCDモジュールは3.3V駆動のものを使います。今回使用したものはバックライト点灯に3.3Vでは足りないため、チャージポンプで昇圧しました。点灯状態で3.9Vを得ています。やや暗いです。
※バックライトは電流を食うため(データシートには5V時で110mAと)、チャージポンプで5Vまで昇圧するのは難しい。

回路図のLCDモジュールの配線は適当に省略しています。実際に使用するLCDモジュールの仕様に沿って配線してください。マイコンとLCDモジュールのピンアサインを変えるなどした場合は、プログラムを適宜修正してください。

部品配置図





回路図と違う点があります。
電源の安定化を狙い、DCジャック脇に220uFの電解コンデンサを取り付けました。その代わりスルー出力の電解コンデンサを省略しました。※この目的では470uFを取り付けることが多いと思うが、220uFが手持ちにあったので。

ポリスイッチの形状は案外落とし穴です。図では水平に描きましたが、実物は写真のように斜めでした。取り付けに失敗したのではなく、2本の足(リード線)に対してねじれた形なのです。セラミックコンデンサの形とは違います。電解コンデンサにぶつかりそうでしたが何とか隙間を空けました。

高さがあるケースでないとフタが閉まりません。背が高い部品はLM317T,ポリスイッチで、基板表面から約2cmあります。LCDも厚みがあるので工夫が必要です。窓型にフタをくり抜くか、背が低いピンソケットを使います。
※秋月電子で「ロープロファイル」と説明されているピンソケット。ピンヘッダもそれに対応したものを。
※結局、ケースは秋月電子のアクリルケース(SK-16 外寸高さ33mm)がちょうどよかった。

LM317Tの可変抵抗と電流計のプッシュボタンはフタに取り付けます。基板上ではその位置に部品が来ないよう配置に気を付けます。プッシュスイッチが長い場合、端子を曲げるなど工夫します。
メンテナンス時にフタを完全に取り外せるよう、ピンヘッダ/ピンソケットで基板と接続しました。L型のピンヘッダを使い、高さに対する工夫をしています。

プッシュスイッチの導線には1.5A流れることが考えられるので、それに耐えられる導線を使います。
ボリューム、電圧計の分圧抵抗、電流計のシャント抵抗の方は数十mA程度なのでラッピングワイヤでも大丈夫です。

マイコンとLCDの配線にはUEW(ポリウレタン銅線)を使いました。もちろんラッピングワイヤでも構いません。

PasSの部品画像

まとめてダウンロード(左記画像の個別ファイルzip)

左4つ 水色…アキシャルリードタイプのインダクタ。
中上 オレンジ色…ポリスイッチ(リセッタブルヒューズ)。径15mmのもの。
中下 薄紫色…酸化金属皮膜抵抗。タクマンの小型1W品をイメージ。
右2つ 緑色と青色…小型端子台。2ピン縦型。

2013/08 追記
今更言うのも何ですが本体に電源スイッチを付けました。
それまではACアダプタを電源スイッチ付きのOAタップに挿し、そちらでオン/オフしていました。

部品について
部品一覧に挙げた部品のうち、ポリスイッチ(PSW1)、プッシュ・オフスイッチ(SW1)、DCジャック(DCJ1)、LCDモジュール(LCD)の値や製品名は一例です。必ずしもそれである必要はありません。同等の物を探してください。

部品一覧には挙げていませんが、LCDのバックライト用にチャージポンプ回路が必要ならその部品も揃えてください。
その他、ケース、コネクタ類、配線材も適宜用意してください。

金属皮膜抵抗(R2,R3)は電圧計の分圧抵抗です。誤差1%品を使います。10kΩ,30kΩは分圧比1/4の組み合わせです。分圧比1/6とするなら15kΩ,75kΩとしてください。詳しくは記事を読んでください。

酸化金属皮膜抵抗(R4)は電流計のシャント抵抗です。小さく作るため1Wとし、そこから抵抗値を決めました。
LM317T使用で1.5A流れるとすると、R * 1.5A^2 = 1W → R = 0.44Ω
近い値で R = 0.47Ωとすると、消費電力は 0.47Ω * 1.5A^2 = 1.06W …ギリギリOKということにしましょう。

誤差1%品にこだわるなら KOA MF1/2シリーズの1Ωはどうでしょうか(千石電商)。※1Ω未満はない。
流せる電流は 1Ω * I^2 = 1/2W → I = 707mA までです。多いか? 少ないか? PCに様々なデバイスを接続するUSBが一口500mAという規格であることを考えると、700mA流せれば大抵の電子工作では十分だと思います。

5V駆動のLCDモジュールを使う場合
3.3V三端子レギュレータ(U2)を、5Vの低ドロップアウト型に変更します。例えばTA48M05F。
そして電源(ACアダプタ)を6V以上とします。5Vは使えません。
これで5V駆動のLCDモジュールが使えるようになります。バックライト点灯にチャージポンプ回路は不要です。
シャントレギュレータ(U4)も5V動作となるので、抵抗(R5)を470Ω〜1kΩ程度に変更します。
この他、AVR(マイコン)(U3)も5V動作となります。スルー出力も当然5Vです。


LM317使用 可変電圧レギュレータ(簡易電圧計・簡易電流計付き)
部品一覧
(回路図はここをクリック
部品名 部品番号 個数 参考価格/備考
可変三端子レギュレータ U1 LM317T 1 2個100円(秋月電子
3.3V三端子レギュレータ U2 TA48M033F 1 100円(秋月電子)
C7,C8のコンデンサ付き
AVR(マイコン) U3 ATmega88 1 180円(秋月電子)
シャントレギュレータ U4 TL431 1 30円
積層セラミックコンデンサ C1,C4,C5,C7 0.1uF [104] 4 10個100円
電解コンデンサ C2,C6,C8 33uF/50V 3 10円
電解コンデンサ C3 10uF/50V 1 10円
抵抗(炭素皮膜抵抗) R1 240Ω [赤黄茶金] 1 1個5円/100個100円
抵抗(炭素皮膜抵抗) R5 330Ω [橙橙茶金] 1 1個5円/100個100円
金属被膜抵抗 R2 30kΩ [橙黒黒赤茶] 1 10円〜20円
金属被膜抵抗 R3 10kΩ [茶黒黒赤茶] 1 10円〜20円
酸化金属皮膜抵抗 R4 0.47Ω [黄紫銀金] 1W以上 1 10円〜40円
可変抵抗 VR1 2kΩ Bカーブ 1 120円(千石電商
ツマミ付き
一般整流用ダイオード D1,D2 1N4007 2 20個100円(秋月電子)
マイクロインダクタ L1 10uH [茶黒黒銀] 1 10個100円(秋月電子)
ポリスイッチ PSW1 例:RXEF160 [1.6A]
(Tyco Electronics)
1 30円(秋月電子)
プッシュ・オフスイッチ SW1 例:MS-351M
(マル信無線)
1 60円(千石電商)
DCジャック DCJ1 使用するACアダプタに
適合するもの(穴径、電流)
1 数十円
LCDモジュール LCD 例:SC802A-3.3V 1 300円(aitendo


◆ ◆ ◆
一番苦労したのは電流計の設計です。
大きな消費電力に耐えられる抵抗は小さな値のものが見つからず、電圧降下が大きくなります。電圧降下を小さくするためには小さな値でなければならず、そうすると大きな消費電力に耐えられるものが見つかりません。
実は最初、LM350を使うつもりでしたが、3Aやら9Wやら、シャント抵抗選びはお手上げでした。定格3A以上で小さめのプッシュ・オフスイッチも見付けられませんでした。
LM317Tに変更した後も1.5Aの条件でシャント抵抗がなかなか決められず、1A以下で妥協しようかとも思いましたが何とか記事に書いた値で決定しました。
ちなみに記事中の「1/2W, 1Ω, 1%, 700mA」の案は最後まで残っていた候補です。

測定器を開発しているエンジニアは、さぞかし苦労していることと思います。また、測定器の性能を評価する人たちはどこを見ているのか、なんとなく分かった気がします。
電圧計・電流計の製作はお勧めしたい電子工作の一つです。


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