[トップページへ戻る]

FT231X利用 ZY-FGD1442701V1/ST7735 LCD動作テスト

2013年6月
部品箱で眠っていたLCDモジュール ZY-FGD1442701V1を動かしてみました。よくあるタイプのLCDで特に注目する点はありません。どちらかというと、先月から秋月で扱い始めたUSB-シリアル変換IC FT231Xを早速利用してみました、という記事です。

関連記事
NOKIA3300-LCD/S1D15G10動作テスト
本記事と同様、カラーLCDモジュールをFT232RLとAVRを使って動かしています。


ブレッドボードで試作

(C)aitendo


aitendoで販売しているZY-FGD1442701V1、キャリーボード付きです。このキャリーボードはやや難ありです。

LCDモジュールとキャリーボードのピン番号の対応がわかりにくいです。LCDモジュールのピン1〜27は、キャリーボードのピン2〜28に対応します。図中の赤文字番号と色づけした端子の位置を参考にしてください。

ピンヘッダを挿す穴が小さいので、そのままでは通常出回っているピンヘッダが入りません。径1mmのドリルで穴を広げるとよいです。乱暴にやるとランドが剥がれるおそれがあるので丁寧に広げます。秋月で扱っている「細ピンヘッダ」なら穴を広げずにそのまま挿せます。※試した。

aitendoサイト販売ページ (2013/06現在)
[ZY-FGD1442701V1] …LCDモジュールのみ
[ZY-FGD1442701V1-PCB] …キャリーボード付き
[2P-1442701V1-PCB] …キャリーボード付き(小型)

回路図と配線図とプログラム
電源について
LCDコントローラST7735の電源電圧は2.6〜(Typ. 2.75V)〜3.3V、I/O電圧は1.65〜(Typ. 1.9V)〜3.3Vです。
LCDモジュールZY-FGD1442701V1の電源電圧はMax. 3.0V、バックライトLEDは3.0〜(Typ. 3.2V)〜3.3Vです。
小さめの3.0Vのレギュレータを探していたところ、秋月で2.85Vのレギュレータを見つけました。
バックライトは3.0Vだとやや暗い気がしたので3.3Vにしました。※電流制限抵抗は不要。データシート上、20mAまで可。

仕様\品名 FT232RL FT231X
電源電圧 3.3〜5V 5V, 3.3V
I/O電圧 1.8〜5V 1.8〜3.3V
3.3V出力 50mA 50mA
ICのピン数 28ピン 20ピン
試作段階ではUSB-シリアル変換にお馴染みFT232RLを使用していました。基板に載せ替える段階でFT231Xに変更しました。FT232RLとの電圧周りの違いは表の通りです。
FT231XはI/O電圧(VCCIO)が3.3Vまでです。今回設計した回路は2.85V動作なので利用できます。

回路図

FT232RL/FT231XのVCCIOに2.8Vを入れることにより、TXD/RXDが2.8Vで入出力されるようになります。
図では省略しましたが、ATtiny2313とLCDモジュールの電源ラインには0.1uFのパスコンを入れます。
SI91841DT-285を三端子レギュレータのように書きましたが、実物は5ピンでSOT-23サイズのICです。

配線図


完成写真
コンデンサはどれも、チップコンデンサを基板ウラ面にハンダ付けしてあります。
部品がキャリーボードにぶつからないよう、ソケットの高さも一応考えてあります。
ピンヘッダをソケットに押し込むとき、指に刺さりそうなほど痛いのでポリイミドテープをかぶせました。効果覿面。

プログラム
AVR(ATtiny2313)のファーム
ダウンロード lcdST7735com_avr.zip .hexとCのソース。
PC側の表示アプリ
ダウンロード lcdST7735com_vsproj.zip VisualStudioのプロジェクト丸ごと。
開発/動作確認環境:
Windows7/SP1/64bit, ATMEL Studio6, VisualStudio2010Exp./C#

※写真はマクドナルド「メガてりやき」。白っぽく見えるが実際の発色は良好。
 右上の赤い線は保護フィルムに書かれたもの。液晶画面は正常。
プログラムはファームも表示アプリも「NOKIA3300-LCD/S1D15G10動作テスト」で作成したものを元にしています。
aitendoでは初期化のサンプルコードが公開されています。上記プログラムではリセット後のデフォルト値で構わないものは記述せず、本LCDモジュールを使うために最低限必要な処理を記述しています。

このLCDコントローラには電源投入リセット、ハードリセット、ソフトリセットがあり、起動時にこの順で実行します。開発初期の頃、電源投入リセット=ハードリセットだと思い込み、ハードリセットを省略していました。そのため画像が表示されませんでした。プログラムをあちこちいじった末に、ものは試しとハードリセットを追加したところ、あっさり動作しました。

128x128ドットの画像を表示するのに11秒かかります。
ATtiny2313のSARM 128byteのうち、96byteを画素データ(16bit/pixel)のバッファに割り当てています。
ATtiny2313のシステムクロックは8MHzで、PC - FT231X - ATtiny2313間は500kbpsで通信しています。

コマンドとパラメータは数値を文字にエンコードして送信し、1フレーム(1文字)受信ごとにデコードしています。
画像データは大容量なので、高速に処理するためバイナリデータのまま、かつ、フレームを連続して送信しています。
500kbpsの速さで、ストップビット1bitではフレームエラーが頻発しました。2bitにするとエラーはピタリと止みました。ちなみに偶数パリティを付けてありますが、パリティエラーが検出されることはありませんでした。

本プログラムでLCDコントローラからの読み込み系コマンドは使用しません。RDは常時Hiにしておきます。
コマンドやデータの送受信の詳細については、ファームウェア/表示アプリともソース中のコメントを見てください。

FT231Xについて
FT231XはFT232RLより後発のICですが、USB-シリアル変換ICであることに変わりはなく、それほど進化した様子はありません。FT232RLが5Vまでの回路で利用できるのに対し、FT321Xは3.3Vまでの回路用になっています。

FT231Xの形はSSOP-20ピンです。ピッチ変換基板を選ぶときに注意が必要です。秋月オリジナルのSSOP-28ピン変換基板は3種類ありますが(2013/06現在)、どれも足が届かないので利用できません。ダイセンのDO20は届きます。


FT232RLのデータシートにはピン名の図が載っていますがFT231Xには載っていません。ビットバンモードで使うときや基板上の配置を考えるときに不便なので図を自作(加工)しました。ついでにFT232RLの方も掲載します。




部品について
LCDモジュール ZY-FGD1442701V1
aitendoで販売しています。2013/06現在、在庫は少ないようです。比較的安価で使いやすいカラーLCDということで、販売開始当時は人気がありました。今となっては特にお勧めするほどのものではありません。

2.85Vレギュレータ SI91841DT-285
ビシェイ製、5ピンでSOT-23サイズのICです。秋月でピッチ変換基板を扱っています。
入力電圧は2〜6V。入力3.3Vだと出力は2.5Vしか出ませんでした。入力5Vで2.8V出ました。
今回の工作ではシャットダウン機能を使用しないので、SD(ピン3)はVCCに接続します。ノイズリダクションも必要なしとし、BP(ピン4)は解放しておきます。

USB-シリアル変換 FT231X
FT232RLに比べ、小さい(ピン数が少ない)ことが基板に収める上での利点です。

マイコン AVR ATtiny2313
ピン数、機能、大きさの面で、今回の工作に適しているマイコンです。SRAM容量が少ないのがネックです。
もちろんATmegaシリーズでもPICでも何でも構いません。※ただし、それらに本記事で公開しているファームは使えない。

USB-ミニB 基板用コネクタ
いつもなら基板にコネクタ用の穴開け加工をして取り付けているところ、今回はモジュール化してみました。取り付け先の基板を加工する必要が無くなり、後から位置を変更することができるようになりました。しかしもっと簡単な方法はないものか…


【参考】 細ピンヘッダ
変換基板の足に秋月の細ピンヘッダを使いました。シングルICソケット(丸ピンICソケットの穴)にも挿せる、と商品説明に書いてあるのですが、実際にやってみるとスムーズに抜き差しできるのは4ピンくらいまでです。10ピンもの長さになるとキツキツで使い勝手がよくありません。

おまけ
普段、秋月FT232モジュールをAVRライターとして利用しています(FTAVRW)。今回の工作ではFT232モジュールとAVRを同時に使用しているため、別のライターが必要になりました。使い慣れたライターで作業したかったので、余分に持っていたFT232RLで作ることにしました。

左:今回作った素のFT232RLを利用したもの。
右:秋月FT232モジュールを利用したもの。


FT232RL利用 AVRライター(FTAVRW) 配線図

USBコネクタの位置で基板ウラ面に4.7uFないし10uFのチップコンデンサを付けます。
GND配線はピッチ変換基板上で済ませています。ライター基板上ではGNDは1つのピンにしか出ていません。
ライターではなく単なるシリアル通信モジュールとしても使えます。TXD/RXDのみの通信でI/O電圧は5Vです。
さらに、単なる3.3V電源にもなります(50mAまで)。ジャンパーピンで切り替えます。I/O電圧は5Vのままです。


◆ ◆ ◆
3年前、時計付きミニフォトフレームを作ろうと購入したLCDモジュールでしたが、先に「ミニフォトフレーム NOKIA3300-LCD」を作って満足してしまい、今まで部品箱で眠っていました。最近このLCDのことを思い出したものの、部品箱に戻すとまた何年も使わない気がしたので、とりあえず何か映る形のものを作りました。


(C) 『昼夜逆転』工作室 [トップページへ戻る]
inserted by FC2 system