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7セグ6桁時計 〜ニキシー管ならぬ7セグ管〜

2011年7月
近頃、にわかにニキシー管時計の人気が上昇しているようです。現在、ニキシー管は非常に入手しにくいデバイスなので、時計の回路が設計できても作るのは難しいと思います。そこで7セグ時計を見直してみましょう。工夫すればニキシー管時計っぽくなります!?

2011/10 追記
ファームウェアと制御アプリを公開しました。このページの最後にあります。


製作物紹介(動画)
7セグ6桁時計を動画で紹介。試し撮り、かつ、未編集動画なので内容は分かりにくいです。ご勘弁。


一体何なのか分からない本体。
7セグモジュールを挿していくと時計であることが分かります。

ハード説明。分割した状態。
表示部と7セグモジュール。数個の7セグを抜いた状態で、挿した状態との比較が見られます。
制御部にFT232モジュールを組み込み、表示ボードを装着します。電源USBケーブルを挿します。
一旦電源ケーブルを抜き、電気二重層コンデンサでバックアップされていることを示しています。

操作内容説明。
時刻の設定。ボタンクリックで値を変更します。ボタン長押しで連続変更できます。
時間制の設定。12時間制/24時間制/30時間制が設定できます。
年月日と曜日の設定。ここまで終わると「Adj.End」と表示され、時計状態に戻ります。

カレンダー表示の「年」の設定。年月日順、月日年順、西暦、和暦(元号)、年表示なし。
時計状態からボタンクリックでカレンダー表示開始。2秒ごとに日付、曜日を自動切り替えして時計表示に戻ります。時計を30時間制にしている場合、24時から30時まで(深夜0時から朝6時まで)は前日の日付と曜日が表示されます。それはそれで合っています。

表示効果の設定。
時計表示の数字:表示効果なし(単純点灯)、フェードイン・フェードアウト(独立)、フェードイン・フェードアウト(重ね)、書き順(フェードなし)、書き順(フェードあり)、スクロール(フェードなし)、スクロール(フェードあり)。
コロン代わりのDP:常時点灯、常時消灯、点滅(フェードなし)、点滅(フェードあり)。
明るさ:0〜7の8段階。7が最大輝度。0が最小輝度。完全消灯はしない。


ソフト説明。上記設定が全てPCから操作できます。
PCアプリを起動し、7セグ時計に接続。時刻が一発で合わせられます。
続けて時間制、カレンダーを設定。
タブを切り替え、表示効果の設定デモ。続けて明るさ変更デモ。

表示効果を「フェードイン・フェードアウト(重ね)」に設定。アクリルパイプを被せると…
なんだかニキシー管時計が目の前にあるような気がしてきます。


製作物紹介(静止画)
7セグ6桁時計を写真と説明文で紹介。※以下はツイッターに書いたことのほぼコピペです。

ある日の製作風景。何を作っているかというと…
ニキシー管時計をイメージした7セグ6桁時計。9割くらい完成。光り方がポイント。単にパッパッと数字が変わる普通の点灯方法ではない。フェードイン・フェードアウトの重ねでニキシー管の雰囲気を再現。7セグならではの表現もあり。

背が低いピンソケットを使い、7セグモジュールの足を見せることで「挿している」感を演出している。
背面。1個だけ基板配線の7セグモジュールを挿してある。7セグによっては背面から光が綺麗に漏れる物がある。そのため空中配線にこだわった。残念ながら写真の7セグは背面から光がほとんど漏れない物。
上面。完成状態を確認するため暫定的にアクリルパイプを被せてあるだけ。フタを付けるかは検討中。どうくっつけても水平方向からフタの断面は見える。それは美しくないので、だったらフタ無しでもいいかと思っている。
分割した状態。7セグはモジュールになっていてソケットへ抜き差しできる。1桁ずつ長さや色を変えたりできる。秋月のFT232RLモジュールでPCと通信。高さを14mmに抑えるためジャンパーピンを加工した。14mmの理由はスペーサの長さ。20mmにすると高くて不安定に見えるし、上下の基板の隙間が空きすぎて格好悪い。

FT232RLモジュールは電源コネクタ兼用。それとは別に5VのACアダプタも利用可能。通信線と電源線をピンヘッダに出してあり、こちらも利用できる。
電気二重層コンデンサでバックアップ。省電力は考慮していないが20分くらいもつ。電源の差し替えには十分な時間。7セグは5分くらいで消えるがマイコンは動作している。

外部クロックはコストの面から発振器ではなく振動子。誤差は1日3秒以下(実測)。1カ月に1分の誤差なら日常生活に問題なしと判断した。スペース的には発振器に取り替えることも出来るようにしてある。右下のボタン2つで時刻その他を設定する。もちろんPCからも設定操作は可能。
※簡単に時刻合わせができるので多少精度が甘くても構わないという考えもあって振動子にした。

中央のICはATmega88P。外部クロック8MHz動作。部品調達の都合上、16MHzのクリスタルを2分周して使っている。右のICはトランジスタアレイ。シンクドライバ。7セグはカソードコモンに対応。

7セグモジュール。
面倒くさい空中配線だったが治具で大助かり。左端のやつは違うパターンの1個。これだけ基板配線。
夜間の点灯イメージ。
本当はアクリルパイプが綺麗な効果を与えているのだが、この写真だと上手く伝わらない。一応、光り物の美しさがなんとなく分かる感じ。


回路図と配線図
回路図

よくある7セグ6桁時計を基本にして、いくつか機能を追加したものです。
動作電圧は5V。電源は安定化されたACアダプタ、またはUSB給電とします。

PCと通信して時刻合わせなど設定したかったので、USB-シリアル変換モジュールを組み込めるようにしてあります。秋月電子のFT232RLモジュール(TTLレベルのもの)を利用します。

バックアップ用に電気二重層コンデンサ(以下EDLC)を付けています。EDLCには充電時の過電流防止策として10Ωの抵抗を付けています(電流制限抵抗)。大きい値にするほど充電時間が延びます。
EDLCの内部抵抗をあてにして電流制限抵抗を省略してもよさそうですが、念のため付けました。
抵抗を入れると放電時に邪魔になるので(文字通り抵抗になるので)、ダイオードでショートカットします(回路図のD2)。電圧降下が低いほどよいのでショットキバリアダイオード(以下SBD)にします。

EDLCが充電された状態で、それより低い電圧の電源機器をつないでしまった場合、放電電流が電源機器に逆流することが考えられます。防止策としてそちらの経路にもSBDを入れておきます(回路図のD1)。
D1は必要か?という疑問があるかもしれません。通常の運用だと電源が5V、SBDを通して4.7VでEDLCが充電されます。回路も4.7Vで動作します。電源を抜くと同時にEDLCは放電し、SBDを通り、4.4Vで回路が動作します(徐々に低下します)。ここで、元の電源に戻そうとして、うっかり3.3VのACアダプタを挿してしまう、といったミスが無いとは限りません。そのためD1のダイオードを仕込んでいます。※考え過ぎかもしれませんが、電源周りゆえに念を入れました。

配線図
電源部と制御部の基板。発振器バージョンは参考として掲載。
ボタンは前面2個か背面2個か、どちらかだけでよいです。操作性重視で4個付けても構いません。
トランジスタアレイの配線は、前面側は見た目を考慮して基板ウラで配線します。UEWでよいです。
背面側の線には7セグのコモン電流が流れます。電流の大きさを考慮してETFE線(ラッピングワイヤ)にします。



表示部の基板。2層でプリント基板を作るとしたらどうなるか、というお試しを兼ねた配線図です。
実際の製作ではUEWでグイグイ一筆書き配線しました。


この表示部の配線では、時計のコロンは7セグのDPを使って「88.88.88」表示となります。別途、LEDを4個用意して「88:88:88」表示で作ることもできます。「AVR ATtiny2313 7セグ4桁ボード応用デジタル時計 〜バリエーション編〜」のページ一番下に出ている回路図を参考にして下さい。ただしその場合、どの桁のDPも点灯しなくなるので、カレンダー表示中など時計以外の状態のとき、分かりにくい表示となります。

制御ソフト
USB-シリアル変換モジュールを通して7セグ時計と通信し、時刻合わせや各種設定を行います。


現在の時刻または任意の時刻が設定できる。
時間制は、12時間制のときに午前/午後を区別するマークの付け方を選べる。
表示効果を選択するとアイコンがアニメーションし、具体的なイメージを確認できる。

「日付と時刻」は自由にタイミングを見計らって「決定する」ボタンを押し、設定します。
「時間制、カレンダーの表記、表示効果、明るさ」は、操作するとリアルタイムで7セグ時計に反映されます。

7セグモジュールの作り方
7セグモジュールの作り方を説明します。写真のものは試作品で、実際に7セグ時計で使用したものと細部が異なります。


ピンヘッダと7セグを接着します。瞬間接着剤を使います。
ピンヘッダは7セグの表面から1〜2mm奥へ接着します。例えば基板の上にピンヘッダを置き、7セグを滑らせて接着すると上手く作れます。



7セグの下段ピンとピンヘッダをハンダ付けします。
7セグの足をピンヘッダ側へ曲げ、余分な長さをカットしてハンダ付けします。

7セグの上段ピンとピンヘッダをハンダ付けします。配線材にはUEW(ウレタン皮膜線)をお勧めします。

まずピンヘッダにUEWを巻き付け、ハンダ付けします。
写真ではピンヘッダにUEWを乗せて先端から出す方向でハンダ付けしていますが、より見栄えを重視するなら、ピンヘッダの中ほどに巻き付けてハンダ付けした方がよいです。本番の製作ではそのようにしています。

次にUEWの反対側を7セグの足に巻き付けます。弦を張る感じです。
巻き付けたところをハンダ付けします。

パイプに入るよう、7セグの足を数mm カットします。
※ピンソケットは撮影台の代わり

空中配線ではなく基板を使う方法もあります。

メリット
7セグとピンヘッダがしっかり接合できる(接着剤ではない)。
無造作につかんでも引っ張っても壊れない。

デメリット
ユニバーサル基板の加工が面倒。
ユニバーサル基板にしろプリント基板にしろ、7セグ背面からの光の漏れは少なくなります。ニキシー管の背面は光を通さないようになっているので、その意味で再現度は損なわれません。
基板で頑丈に作りたいが、7セグ・アレンジらしい光の漏れも楽しみたい、ということであれば1.27mmピッチのユニバーサル基板を使うとよいかもしれません。※写真の基板は一般的な2.54mmピッチ。

7セグモジュールの発光テスト

発光テスト。

光の漏れが美しい。
空中配線したUEWの、フィラメントを思わせる儚さがよいです。

ニキシー管のイメージ。
※試作段階でのイメージ確認写真。

実験のため大きなピンソケットに挿していますが、本番製作ではピンヘッダと同じ幅にし、それごとパイプに収めます。

【参考】 7セグの発光色
どれも直接目で見ると鮮やかで綺麗なのですが、ケータイカメラだと全く見た目通りに撮影できません(P705i)。
もちろん実物はどれも白っぽくなく、名前通りのきちんとした色で見えます。
↑オレンジ/オレンジ ↑黄/黄 ↑オレンジ/黄 ↑黄緑/黄緑
↑青/青 ↑朱/朱 ↑朱/赤 ↑朱/オレンジ

【後日追記】こだわることでもないのですが、別のケータイカメラで撮影してみました(W51CA)。
↑オレンジ/オレンジ ↑黄/黄 ↑オレンジ/黄 ↑黄緑/黄緑
↑青/青 ↑朱/朱 ↑朱/赤 ↑朱/オレンジ


部品について
回路図を見てハードもファームもPCアプリも自力で作ろうとする人に向け、部品について説明します。
※現在、都合によりファームウェアとPCアプリを公開していません。いずれ公開する方向で検討していますのでしばらくお待ちください。
2011/10 ファームウェアとPCアプリを公開しました。このページの最後にあります。

USB-シリアル変換モジュールには秋月電子のFT232RLモジュール(TTLレベル)を使います。このモジュールのドライバはFTDI社(FT232RLのメーカー)のサイトで無償公開されています。事前にPCにインストールしておきます。

制御用のPCアプリはモジュールが何であるかは意識しないので(単なるCOMポートとして見えるだけ)、FTDI社ではなくProlific社のモジュールでも、ケーブル状のものでも構いません。PCにCOMポート(もっと言えばRxDとTxD)が増設できれば何でもよいです。ただしTTLレベルのものにしてください。

電気二重層コンデンサ(スーパーキャパシタ/EDLC)はELNA社の1F/5.5Vのものを使いました。容量はこれ以上でも以下でも構いませんが、耐圧は必ず5V以上(5.5V品)とします。
本機のバックアップ機能は短時間の停電や電源の差し替え時に時計動作を保つことが目的です。電源なしで長時間動作させるためのものではありません。

抵抗R9はEDLC充電時の電流制限抵抗です。充電電圧が5Vならば数Ω〜10Ω程度でよいです。

電解コンデンサC1は電源平滑化のために付けます。また、これがないとEDLC放電中の状態から電源機器へ切り替えるときに、マイコンがリセットすることがあります。※残量による。電流がマイコンへ行く前に充電に回るため。
容量は数百uF、耐圧は10V以上で適当に。あまり太いと隣接するEDLCとぶつかるので大きさ選びに注意。背が高いものは倒してハンダ付けするとよいでしょう。

ダイオードD1,D2はショットキバリアダイオード(SBD)です。ここには電圧降下が低いダイオードが必要です。
部品一覧では例として1S3を挙げましたが、数百mA流せるものなら他のSBDでもよいです。

トランジスタアレイはシンクドライバを使います。東芝TD62003(7回路)を前提として設計しています。8回路のTD62083でも構いません。いずれにしろ、これに合わせて7セグはカソードコモンにします。
7セグの色や大きさは好みで選んでください。※個人的には秋月電子の朱色1個60円/10個500円がお勧め。(2011/07現在)

抵抗R1〜R8は7セグの電流制限抵抗です。使用する7セグの順方向電圧(VF)と電源電圧5V(正確には4.7Vとなる)から、好みの明るさになるよう計算してください。なお、本機には明るさ調節機能があるので、あまりこだわって抵抗値を決める必要はありません。部品一覧では、仮に VF=2.0V の7セグに10mA流すものとして220Ωを挙げています。

外部発信源が発振器ではなく振動子である理由、16MHzである理由は記事に書きました。そちらを読んでください。

基板と各種コネクタは好みの外観になるよう、自由に決めて構いません。部品一覧では今回の製作で使用したものを挙げています。
ピンヘッダ/ピンソケットは長いものを切って使います。ピンソケットは切り代として1ピン分の幅を考慮してください。
7セグモジュールに被せたアクリルパイプは 外径20mm/厚さ2mm/長さ300mm 東急ハンズで472円。(2011/07現在)


7セグ6桁時計 部品一覧 (回路図はここをクリック
部品名 部品番号 個数 参考価格/備考
AVR(マイコン) U1 ATmega88 1 88Pが180円(秋月電子
トランジスタアレイ U2 TD62003AFG 1 2個100円(秋月電子)
電気二重層コンデンサ EDLC 1F/5.5V 1 170円(秋月電子)
電解コンデンサ C1 220uF/25V 1 20円
積層セラミックコンデンサ C2,C3 0.1uF [104] 2 10個100円
積層セラミックコンデンサ C4,C5 22pF 2 10個100円
抵抗 R1-R8 220Ω [赤赤茶金] 6 1個5円/100個100円
抵抗 R9 10Ω [茶黒黒金] 1 1個5円/100個100円
ショットキバリアダイオード D1,D2 1S3 2 1個30円/10個200円(秋月電子)
7セグ LED1-LED6 カソードコモン 6 1個100円など
クリスタル振動子 XTAL 16MHz 1 10個500円(秋月電子)
タクトスイッチ SW1,SW2 -- 2 1個10円
電源コネクタ DCJ -- 1 4個100円(秋月電子)
好みで適当に
ピンヘッダ CN1 1x4 1 電源/通信線の接続用
ピンソケット CN2 2x8 1 制御部側/足長タイプ
ピンヘッダ CN3 2x8 1 表示部側
ピンヘッダ -- 2x5 L字型 6 7セグモジュール(モジュール側)
ピンソケット -- 2x5 ロープロファイル型 6 7セグモジュール(表示部側)
スペーサ -- 14mmなど 4 長さは部品の背の高さによる
基板 -- 140x40mm 2 片面基板 1個150円(秋月電子)


◆ ◆ ◆
7セグはパッパッと光らせるだけでなく、独自の面白い表現ができます。
フェードを掛ければ柔らかさや暖かさを表現することができるし、
セグメントの点灯パターンで作者のオリジナリティを発揮することもできます。
大きさや色が選べることも7セグの魅力です。

よく見る7セグ時計でも外観のこだわりで意外な姿に見せることができます。
工夫とアイデア次第で、ありふれたもの個性あふれるものに変わります。
※ちょっと上手いこと言いました。


7セグ6桁時計 ファームウェア+制御アプリ ダウンロードseg7clock.zip
zipファイルの中身
7セグ6桁時計AVR設定.txt …AVRのヒューズ設定の説明など。[TAB=4]で見てください。
atmega88seg7clock.hex …ファームウェア。※ソースファイルは非公開。
SSeg6ClockCtrl.exe …制御アプリ。.NET Framework 3.5/SP1。※ソースファイルは非公開。

説明書
7セグ6桁時計 操作説明書
7セグ6桁時計 コントロールアプリ操作説明書


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