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NJM2360を利用した昇圧回路

2013年7月
NJM2360は昇圧、降圧、インバータ回路が組めるDC/DCコンバータです。昇圧回路を組み、USB給電(5V)でプラズマライト(12V)を点灯させてみました。
おまけでもう1点。出力電圧が固定の昇圧用IC HT7733(HT77xxシリーズ)を使い、電池1本(1.5Vまたは1.2V)でマイコン+LEDの回路(3.3V)を動かす例を紹介します。

スイッチングレギュレータを使った可変安定化電源」の記事では、100円ショップの「シガーソケット-USB充電器」と中身のMC34063について触れました。NJM2360はMC34063と互換性があります。本記事が使い方の参考になればと思います。

2013/07 追記 HT77xxシリーズ使用、昇圧コンバータを追加。
2013/08 追記 NJM2360昇圧コンバータのインダクタを変更した結果を追加。


NJM2360を利用した昇圧回路
NJM2360を使いこなすには、データシートだけでなくアプリケーションノートも読みましょう。昇圧回路、降圧回路、インバータ回路の設計手順が具体的に説明されています。
JRC http://semicon.njr.co.jp/jpn/index.html
製品情報 > 電源 > スイッチングレギュレータ > NJM2360
◆データシート NJM2360_J.pdf
◆NJM2360/A アプリケーションノート NJM2360_A_APP_J.pdf

目的
秋月のプラズマボール PBL40U-01(12V/max170mA)をUSB給電(5V)で点灯させる。

設計
アプリケーションノートの「昇圧回路・小電力」編を参考に、「5V入力、12V/150mA出力」の回路を設計しました。
内蔵パワートランジスタの出力は2Wまでが目安です。12V*150mA=1.8Wを目標としました。※後でオチが付く。

■発振周波数の決定
Ct = 470pF …手持ち部品の関係で470pFとした。
-> f = 58kHz …グラフから読み取った値。
-> t_on = 13us, t_off = 4us …グラフから読み取った値。

グラフが粗いので正確な値を読むのは難しいです。あるいは、多少ずれた値でも性能は大きくブレないということかもしれません。

■インダクタンスの決定/ピーク電流の計算について
Lmin = {(5V-0.7V)^2} / {2*(12V*150mA)} * (13us^2) * 58kHz
= 18.49 / 3600m * 169uu * 58k
= 51uH以上 …L=220uHとする。

-> Ipk_max = (5V-0.7V) / L * t_on = 254mA
-> I_Lmin = Ipk_max * 2 = 510mA

部品はAL0510-221K(220uH/1.0A/1.5Ω)としました。※アキシャルリード品で小さく作りたくて選んだ。
100uHでよいかもしれません。例えばLHL13NB101K(100uH/2.0A/0.12Ω)。※上記同様、秋月の取扱品から選ぶとして。
結果・反省まで行ってから分かったことですが、ここでは後者を選ぶのが正解のようでした。
電源を作る場合、インダクタは直流抵抗が小さいものを使います。

■外付けスイッチングトランジスタについて
Pin = (12V * 150mA) / 効率0.7 = 1.8W / 0.7 = 2.57W …変換効率を考慮したら2Wを超えていた。
-> Pin - Pout = 2.57W - 1.8W = 770mW < Pd_max:875mW …NJM2360A-DIPの絶対最大定格は超えていない。
Ipk_max = 254mA < 1.5A …NJM2360の絶対最大定格は超えていない。

内蔵パワートランジスタ利用時の出力最大値の目安2Wを超える設計だったと、後から見直して気付きました。
実際、12V/150mAは出せず、80mA程度。変換効率は約50%ということに。

■コレクタ抵抗Rcの設計
Rc
= (5V-0.4V-0.6V) / {(Ipk_max/hfe) + (0.6V/158Ω)}, hfe = 35
= 4 / {(254m/35) + (0.6/158)} = 362Ω

Rc = 330Ω としました。

■検出抵抗R1およびR2の設計
R2
= (Vo-1.25V) / (400nA*200倍), Vo=12V
= 134kΩ

R1
= 1.25V / (400nA*200倍)
= 15.6kΩ

R1を数k〜数十kΩとして、R2を Vout = 1.25V * (1+R2/R1) の式から求める方法もあります。いずれにしろ、E24系列を見ても適当な値が決まらないので、手持ちの半固定抵抗500kΩをR1,R2に割り振ることにしました。

■Rsc(過電流検出抵抗)の設計
Rsc
= V_IPKmin / I_Lmin = 250mA / 510mA …(I_Lmin=510mA) < (Isw=1.5A) より、I_Lminを使って計算する。
= 0.5Ω

1Ωの抵抗を2個並列にしました。

■平滑容量Coの設計
アプリケーションノートの例題はCo=470uFとしています。これを参考にします。
…が、手持ち部品の都合で220uF/35Vとしました。入力側も同じ理由で220uF/25Vとしました。

■ダイオードD1の選択
ショットキバリアダイオードで、I_Lmin(=510mA)以上流せるもの。手持ちの1S3(1A/逆電圧30V)としました。

結果・反省
回路を組んで出力を確認しました。負荷抵抗を下げて行くと150Ωあたりから12Vを下回り始めました。結局、出力12V/80mA程度の性能となりました。アプリケーションノートの例題(15V/80mA)ほど力を発揮できていません。
設計の出発点であるタイミングキャパシタCtの値は特におかしくないと思います。
インダクタの選定を間違えた気がします。電力用の、直流抵抗が小さいものを使えば改善するはずです。
村田製作所
インダクタ 用語集 http://www.murata.co.jp/products/inductor/learn/glossary/index.html

回路図


完成/動作の様子
負荷が重いと12Vは出せません。プラズマボールは9V+-0.5V程度で点灯しています。90mA流れている計算です。


インダクタを変更した結果 2013/08 追記
上記「結果・反省」で指摘したようにインダクタを交換してみました。
LHL13NB101K(100uH/2.0A/0.12Ω)に交換した結果、プラズマボールは11.3Vで点灯しました。改善しました。

LHL13NB101Kは案外大きくて重たいです。もう少しだけ小さい
LHL08NB101K(100uH/0.79A/0.32Ω)でもよいかもしれません。定格電流は今回のコンバータの条件を満たしています。直流抵抗はLHL13NB101Kよりわずかに大きいので、その分性能が落ちると思います。が、気になるほどではないかもしれません。
※どちらのインダクタも、秋月の取扱品から選ぶとして、という話で引き合いに出しました。
 他店で他の型番のものを購入しても構いません。もちろんスペックが条件を満たす範囲で。


HT7733を利用した昇圧回路
HT77xxシリーズは出力電圧が固定の昇圧用DC/DCコンバータです。HT7733は出力3.3V、HT7705は出力5V、等です。入力に乾電池(1.5V)または充電池(1.2V)を1〜2本使用して、3.3V回路や5V回路を動かすことができます。

回路図

ダイオードはショットキバリアダイオードを使います。
電源は乾電池/充電池とし、入力側のコンデンサを省略しました。
出力側にタンタルコンデンサが指定されていますが、手持ちにないのでアルミ電解コンデンサを使いました。この場合、容量は47uF〜100uF程度必要かもしれません(当てずっぽう)。

作例
バーLEDクリスマスツリー #3 プリント基板製作に挑戦」のLEDツリーを挿すための電池ボックスを作りました。電池1本(1.5Vまたは1.2V)を3.3Vに昇圧し、マイコン(ATtiny2313)とバーLEDを動作させます。



使用例の電池は「LEDソーラーライトの中身」で紹介したNi-MH充電池です。単4形、1.2V/200mAh。
LEDツリーの消費電流はおよそ25〜35mA。満充電の状態から点灯開始して、5時間半ほど持ちました。

HT77xxシリーズを利用したシンプルな昇圧回路
作例
充電池/乾電池の{1.2V, 2.4V; 1.5V, 3.0V}から{3.3V, 5.0V}が得られる昇圧コンバータです。HT7733とHT7750を使っています。見た目は同じです。
充電池2本(2.4V)でLEDを光らせたときの実測値は、3.28Vと4.88Vでした。

配線図の出力側にある0.1uFのコンデンサは、チップ品を基板ウラ面に取り付けています。

配線図



◆ ◆ ◆
NJM2360はMC34063と置き換えて使えます。ドキュメントが読みやすいのでおすすめです。
実際に使ってみて、狙い通りの設計をするには少し練習が必要だと思いました。


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